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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
…そうして、まもなく二人は婚約を交わした。

千智は徳子の学業に大変理解があり
「徳子さんは学校を卒業してから僕のところにいらしてください。
僕は来年ハイデルベルク大学の院に進む予定です。
大学の近くの小さなコテージに住んでいるんです。
…それで…あの…もしも良かったら…ご一緒に暮らしてくださいますか?
通いの家政婦が一人しかいない質素な住まいで申し訳ないですが…」
そう遠慮勝ちに提案したのだ。

二人だけで海外暮らしができるなら、願ったりだ。
まだまだ窮屈な日本になど帰りたくはない。
自分ひとりで高遠本家に入るのも、二の足を踏んでいた。
徳子は二つ返事で了承した。

結婚式はハイデルベルクの古い小さな教会でこじんまりと挙げた。
招待客は千智の大学の友人たちと徳子のフィニッシングスクールの友人たち、地元で知り合った下宿屋の女将さんやその家族、懇意にしているパン屋やソーセージ屋、学生食堂の店主たち…と素朴で、けれど心温まる賑やかな式となった。

日本にいる母親は
「徳子さんの花嫁姿を見られないなんて…」
と寂しがりながらも神戸のロシア人のデザイナーにオーダーした総レースのウェディングドレスを送ってくれた。
そのドレスを身に付け、コンテ・ド・シャンボールの薔薇を髪に飾った徳子を千智はとても眩しそうに見つめ、おずおずと抱き締めた。
「…こんなに美しいひとが僕の花嫁になってくださるなんて…。
いまだに信じられない気持ちです…」
そんなはにかみ屋の花婿に、徳子はそっとキスをした。

…千智は色白の貌を朱に染めた。
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