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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
年月は瞬く間に過ぎた。
二人は仲睦まじく暮らしていた。
千智は相変わらず大人しく口数は少ないが、優しく真面目な夫だった。
ハイデルベルク大学の助教授となり専門の植物学から更にフィールドを広げ、薬草学の分野も熱心に研究を始めていた。
千智は本の虫で、読み出すと寝食を忘れて没頭してしまう。
食事だと家政婦が書斎に籠る千智を呼びに行っても反応がない。
徳子が見に行くと、千智は一心不乱に研究書を読み漁っていた。
…瞳を輝かせ、生き生きとしたその様は、とても頼もしく堂々として見えた。
徳子はそっと微笑んだ。

「旦那様のお食事は書斎に運んでさしあげて。
お邪魔をしないように静かに…ね」
家政婦に申し付けた。

燃え上がるような恋で結ばれたわけではなかったが、徳子は穏やかで優しく聡明な夫に次第に信頼感と愛情を深めていったのだ。

…けれど結婚後、一年経っても二年経っても…そうして結婚して八年が過ぎても二人に子どもが授かることはなかった。

高遠本家にとって、世継ぎ問題は最重要課題だ。
日本にいる御台所様…千智の母親から辛辣な手紙が再三届いた。
まだうら若い徳子には、それが屈辱と苦痛であった。

…子どもが授からないのは、女だけの責任なの?
それに、もし授からなかったら、私の存在意義はないの?
理不尽な怒りと哀しみに苛まれる日々…。
千智はそんな徳子に、なんと声を掛けて良いか分からないようだった。
妊娠へのプレッシャーに苦しんでいると察知した夫は、ある日、おずおずと切り出した。

「…徳子さん。
しばらく、寝室を別にしませんか?
僕の研究や執筆は深夜までかかりますし、その度に徳子さんを起こしてしまうのは忍びないのです」

…いつまで経っても懐妊しない自分に、失望した言葉のように聞こえた…。
徳子はその時、夫に静かに見捨てられたような気がしたのだ。

そうしてそれ以来、六年間…夫婦の夜の営みはぷっつりと途絶えていた。



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