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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
「…貴女の匂いが好きだ…。
何をつけているの?」
熱く激しく愛し合ったのち、アルフレッドはまるで大好きな姉に甘えるかのようにどこかあどけない仕草で徳子のうなじに鼻先を擦り寄せてくる。
徳子はうっすらと微笑んだ。
…ダークレディのパーゴラの下、長椅子に横たわったままぐったりと、二人はまだ動けない…。
激しくも陶酔に満ちた愛の交歓は、三度にも及んだからだ。
しどけない姿の二人を隠すのは、徳子の琥珀色のオーガンジーのストールと…咲き誇る蔓薔薇だけだ。
「…ゲランのミツコよ…。
シプレの薫りが好きで、スイスのフィニッシングスクールにいたときから、お気に入りなの…」
青年貴族のアポロンの髪のような光り輝く美しい金髪を優しく搔きあげてやる。
「…ミツコ…?
日本女性の名前だね」
関心を持ったらしいアルフレッドが首を擡げる。
「ええそう。
色々な説があるわ。
かつてオーストリア・ハンガリー帝国の貴族、クーデンホーフ・カレルギー伯爵の元に嫁いだ光子夫人をイメージしたとか…。
ファーレルの小説「バタイユ」の主人公ミツコをモデルにしたとか…。
…けれどファーレルもクーデンホーフ光子伯爵夫人にインスパイアされて「バタイユ」を書いたそうだから、結局は光子夫人…ということになるのかしらね…」
「…なるほど…ね。
…西洋とオリエンタルが融合した神秘的で謎めいた薫りだ。
…それに…」
起き上がり、口づけでふっくらと腫れ…婀娜めいた徳子の唇を指先でなぞる。
「…とても官能的な薫りだ…。
…ヨシコによく似合う…」
そのままのしかかられ、徳子は睨む真似をする。
「だめよ、もう。
もうすぐ七重が来るわ。
…それに、午後からオルソープ男爵夫人が見えるの。
コンテ・ド・シャンボールを株分けして差し上げるのよ」
「…コンテ・ド・シャンボール?」
「ええ。
…高遠家の家紋の薔薇だから、丹精を込めて育てているの。
その噂をお聴きになったオルソープ夫人がぜひに…と仰って…」
アルフレッドの美麗な彫像のような貌が嫉妬に歪む。
「…へえ…。
やっぱりヨシコはプロフェッサーを大切にしているんだね」
何をつけているの?」
熱く激しく愛し合ったのち、アルフレッドはまるで大好きな姉に甘えるかのようにどこかあどけない仕草で徳子のうなじに鼻先を擦り寄せてくる。
徳子はうっすらと微笑んだ。
…ダークレディのパーゴラの下、長椅子に横たわったままぐったりと、二人はまだ動けない…。
激しくも陶酔に満ちた愛の交歓は、三度にも及んだからだ。
しどけない姿の二人を隠すのは、徳子の琥珀色のオーガンジーのストールと…咲き誇る蔓薔薇だけだ。
「…ゲランのミツコよ…。
シプレの薫りが好きで、スイスのフィニッシングスクールにいたときから、お気に入りなの…」
青年貴族のアポロンの髪のような光り輝く美しい金髪を優しく搔きあげてやる。
「…ミツコ…?
日本女性の名前だね」
関心を持ったらしいアルフレッドが首を擡げる。
「ええそう。
色々な説があるわ。
かつてオーストリア・ハンガリー帝国の貴族、クーデンホーフ・カレルギー伯爵の元に嫁いだ光子夫人をイメージしたとか…。
ファーレルの小説「バタイユ」の主人公ミツコをモデルにしたとか…。
…けれどファーレルもクーデンホーフ光子伯爵夫人にインスパイアされて「バタイユ」を書いたそうだから、結局は光子夫人…ということになるのかしらね…」
「…なるほど…ね。
…西洋とオリエンタルが融合した神秘的で謎めいた薫りだ。
…それに…」
起き上がり、口づけでふっくらと腫れ…婀娜めいた徳子の唇を指先でなぞる。
「…とても官能的な薫りだ…。
…ヨシコによく似合う…」
そのままのしかかられ、徳子は睨む真似をする。
「だめよ、もう。
もうすぐ七重が来るわ。
…それに、午後からオルソープ男爵夫人が見えるの。
コンテ・ド・シャンボールを株分けして差し上げるのよ」
「…コンテ・ド・シャンボール?」
「ええ。
…高遠家の家紋の薔薇だから、丹精を込めて育てているの。
その噂をお聴きになったオルソープ夫人がぜひに…と仰って…」
アルフレッドの美麗な彫像のような貌が嫉妬に歪む。
「…へえ…。
やっぱりヨシコはプロフェッサーを大切にしているんだね」