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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
私室に引き篭もり、手早く手紙を開く。
…オルソープ男爵家の刻印が押された蜜蝋…。
レディ・イーディスは何を伝えようとしているのか…。
『…今宵、十時にアルフレッドが貴女の薔薇園にお迎えに参ります。
アルフレッドは、貴女と離れることなど耐えられないと私に懇願しに来たのです。
何もご心配なさらないで。
すべての手配は、済んでおります。
…親愛なるレディ・ヨシコ。
貴女の恋を、あきらめないで』
…アルフレッドが、迎えに来る…!
私を…!
激しくも甘美な恋の昂揚感が、その身を押し包む。
徳子は己れの身体を強く抱きしめる。
戦争が、二人を離れ離れにしようとする…。
…私は、このまま日本に帰り、苦しい恋情も何もかも押し殺して生き続けることができるのだろうか…。
あの若く美しく輝かしい美神のような恋人と、別れて生きることなど、徳子には不可能に思えた。
徳子は首を振った。
結い上げた艶やかな黒髪がはらりと解け、肩に振りかかる。
窓を開け、まだ軍靴の足音も知らぬ麗しい五月の薔薇の薫りを吸い込む。
そっと眼を閉じる。
…薔薇の甘く切ない薫りは、恋の薫りだ。
そうして徳子は、百花繚乱と咲き乱れる薔薇たちに誓うのだ。
…私は…アルフレッドと、恋に生きるのだ…と。
…オルソープ男爵家の刻印が押された蜜蝋…。
レディ・イーディスは何を伝えようとしているのか…。
『…今宵、十時にアルフレッドが貴女の薔薇園にお迎えに参ります。
アルフレッドは、貴女と離れることなど耐えられないと私に懇願しに来たのです。
何もご心配なさらないで。
すべての手配は、済んでおります。
…親愛なるレディ・ヨシコ。
貴女の恋を、あきらめないで』
…アルフレッドが、迎えに来る…!
私を…!
激しくも甘美な恋の昂揚感が、その身を押し包む。
徳子は己れの身体を強く抱きしめる。
戦争が、二人を離れ離れにしようとする…。
…私は、このまま日本に帰り、苦しい恋情も何もかも押し殺して生き続けることができるのだろうか…。
あの若く美しく輝かしい美神のような恋人と、別れて生きることなど、徳子には不可能に思えた。
徳子は首を振った。
結い上げた艶やかな黒髪がはらりと解け、肩に振りかかる。
窓を開け、まだ軍靴の足音も知らぬ麗しい五月の薔薇の薫りを吸い込む。
そっと眼を閉じる。
…薔薇の甘く切ない薫りは、恋の薫りだ。
そうして徳子は、百花繚乱と咲き乱れる薔薇たちに誓うのだ。
…私は…アルフレッドと、恋に生きるのだ…と。