この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
使用人たちが慌ただしく行き来する玄関ホールや長い廊下を抜け、徳子は千智を探す。
七重が気遣わしげに近づいてきた。
「旦那様はサンルームにいらっしゃいます」
「…ありがとう。七重」
…千智は、薔薇園が見渡せるサンルームに佇んでいた。
濃灰色のスーツの後ろ姿…。
夫は意外に背が高く、美しい背中をしているのだと、今更ながらに気づく。
けれどその背中は、息を呑むほどの孤独感に満ち溢れていた。
徳子は思わず胸を突かれた。
…そんな夫の背中を、初めて見たような気がしたのだ。
人の気配に気づいたのか、千智がゆっくりと振り返る。
「…徳子さん…」
眼鏡の奥の優し気な一重の眼差しが穏やかに微笑む。
…いつもの、見慣れた夫の笑顔だ。
ややはにかんだようなその笑顔を、徳子は嫌いではなかった。
…いや、むしろ…
そうして、千智は暫く徳子を見つめていた。
やがて、静かに口を開いた。
「…どうして戻って来られたのですか?」
「…え…?」
…何を言っているのか、意味が分からなかった。
千智は、穏やかな…けれどその中に、仄かな寂しさが透けて見えるような微笑みを浮かべ、言葉を重ねた。
「…彼と…ソールズベリー卿とご一緒に、行かれるのでしょう?」
七重が気遣わしげに近づいてきた。
「旦那様はサンルームにいらっしゃいます」
「…ありがとう。七重」
…千智は、薔薇園が見渡せるサンルームに佇んでいた。
濃灰色のスーツの後ろ姿…。
夫は意外に背が高く、美しい背中をしているのだと、今更ながらに気づく。
けれどその背中は、息を呑むほどの孤独感に満ち溢れていた。
徳子は思わず胸を突かれた。
…そんな夫の背中を、初めて見たような気がしたのだ。
人の気配に気づいたのか、千智がゆっくりと振り返る。
「…徳子さん…」
眼鏡の奥の優し気な一重の眼差しが穏やかに微笑む。
…いつもの、見慣れた夫の笑顔だ。
ややはにかんだようなその笑顔を、徳子は嫌いではなかった。
…いや、むしろ…
そうして、千智は暫く徳子を見つめていた。
やがて、静かに口を開いた。
「…どうして戻って来られたのですか?」
「…え…?」
…何を言っているのか、意味が分からなかった。
千智は、穏やかな…けれどその中に、仄かな寂しさが透けて見えるような微笑みを浮かべ、言葉を重ねた。
「…彼と…ソールズベリー卿とご一緒に、行かれるのでしょう?」