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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
「…それからずっと、僕は徳子さんのことを密かに見守っていました。
高遠本家の長男の特権を使って、貴女のことを調べ、報告させていました。
…すみません…。
…貴女が海外の様々な地で、美しく生き生きと利発にご成長されている様子や写真は、僕の何よりの励みと生き甲斐でした。
貴女が薔薇が好きと伺ってからは、植物に興味を持つようになり、植物学者としての道を歩もうと決めました。
…大学も…ヨーロッパを選びました。
…貴女に…少しでも近づきたかったから…」
恥ずかしそうに、眼鏡の奥の瞳が細められる。
それは、徳子がずっと好きだった…心が穏やかになるような千智の笑みだった。
「…どうして…?」
「…え?」
千智が眼を見張る。
涙が溢れ出し、頰を伝うのも構わずに、徳子は尋ねる。
「どうして最初に仰ってくださらなかったの?」
…もし、最初に聴いていたら…私は…。
千智は眼を伏せ、弱々しく首を振った。
「…情けなくて、とても言えなかったです。
小さな貴女に恋をして、ずっと好きで…挙げ句の果て、またもや高遠家の当主の権威を利用して、貴女を妻に迎えようとしていたなんて…。
卑怯すぎますよね。
貴女に嫌われそうで、怖くて言えなかった…」
「…千智様…!
そんなことない…!
私をずっと一途に想ってくださっていたことを知っていたら…私はきっと嬉しかった。
御台所様ではなく、貴方自身が私を選んでくださっていたと知ったら…私は…」
…貴方に、恋をした…。
すれ違っていたかつての切ない想いの欠片が、徳子の胸に静かに降り積もる。
高遠本家の長男の特権を使って、貴女のことを調べ、報告させていました。
…すみません…。
…貴女が海外の様々な地で、美しく生き生きと利発にご成長されている様子や写真は、僕の何よりの励みと生き甲斐でした。
貴女が薔薇が好きと伺ってからは、植物に興味を持つようになり、植物学者としての道を歩もうと決めました。
…大学も…ヨーロッパを選びました。
…貴女に…少しでも近づきたかったから…」
恥ずかしそうに、眼鏡の奥の瞳が細められる。
それは、徳子がずっと好きだった…心が穏やかになるような千智の笑みだった。
「…どうして…?」
「…え?」
千智が眼を見張る。
涙が溢れ出し、頰を伝うのも構わずに、徳子は尋ねる。
「どうして最初に仰ってくださらなかったの?」
…もし、最初に聴いていたら…私は…。
千智は眼を伏せ、弱々しく首を振った。
「…情けなくて、とても言えなかったです。
小さな貴女に恋をして、ずっと好きで…挙げ句の果て、またもや高遠家の当主の権威を利用して、貴女を妻に迎えようとしていたなんて…。
卑怯すぎますよね。
貴女に嫌われそうで、怖くて言えなかった…」
「…千智様…!
そんなことない…!
私をずっと一途に想ってくださっていたことを知っていたら…私はきっと嬉しかった。
御台所様ではなく、貴方自身が私を選んでくださっていたと知ったら…私は…」
…貴方に、恋をした…。
すれ違っていたかつての切ない想いの欠片が、徳子の胸に静かに降り積もる。