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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
「…徳子さん…!」
勇気を振り絞ったように、千智が徳子に向き直る。
「僕は、ずっと貴女を愛しています。
貴女に木香薔薇をいただいたあの日から…少しも変わらずに…いいえ、それ以上に…!」
千智の腕がぎこちなく動き、徳子に手を差し伸べようとする。

…その手を、徳子ははっと押し留めた。
「待ってください。
では、なぜあんなことを仰ったのですか?
…急に、寝室を別にしようだなんて…」
なかなか子どもが出来ずに悩んでいるとき、そう言われたのだ。
自分はもう女としての魅力がないのだと、
千智は自分をもう愛するつもりはないのだと、絶望的な気持ちになったのだ。
「…あのとき私は、千智様に見捨てられたのだと思いました…。
…私が千智様のお子を孕らないから…見限られたのだと…」
「それは違います!」
初めて聞くような夫の激しく大きな声だった。

「違うのです。
貴女が、なかなか孕られないことを気に病んでいらしたのは知っていました。
母からの催促の手紙が貴女を苦しめていることも…。
貴女が孕らないのは貴女のせいではありません。
…私は虚弱体質でしたから、おそらくは私のせいでしょう。
そのことで、貴女がこれ以上苦しまないように、寝室を別にしたのです。
…夫婦の交わりがなければ、身籠もらないことを咎められることはない。
母には、徳子さんが懐妊されないのは私のせいだと、そう伝えました。
だから徳子さんをこれ以上、追い詰めるようなことをしないでくれとも…」
…そう言えば、御台所からの辛辣な手紙は、いつのまにか途絶えていた。
それは、徳子に対して期待を持たなくなったからだと思い込んでいた…。

「…寝室を別にしたのは、徳子さんを懐妊の重圧から解放してあげたいのと…それから…子どもができなくとも、私は徳子さんを変わらずに愛していると、そう伝えたかったのです…」

徳子は泣き笑いの表情で、夫を見上げた。
「…分かりにくいわ…」
「すみません…。
僕は自分の気持ちを伝えるのが本当に下手なのです」
千智がしょんぼりと肩を落とした。

…薔薇園の片隅で、寂しげにしょげていた眼鏡をかけた優しげな少年と、その面影がぴたりと重なった…。
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