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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
次の日曜日、紗耶は早朝から起き出し、支度をした。

『朝の六時にM大前駅改札集合な。
暑くなるとキツイからなるべく早く登り始める!
遅刻すんなよ!遅刻したら罰ゲームな!』
数日前に、隼人から念押しのグループLINEが回ってきた。

…梅雨時だが今日は一日晴天らしい。
スマホの天気予報にほっとする。
買ったばかりのシャツとクロップドパンツに着替える。
髪形は迷った末、前髪を上げ、長い髪は後ろにひとつに結んでみた。
キャップを被るとすっきりしてみえる。
「…いい感じ…かな?」
ドレッサーの前で、紗耶は思わず笑顔になる。



…そっと玄関でスニーカーを履いていると、背後から静かに声が掛かった。
「…紗耶ちゃん、何しているの?」
反射的に、振り返る。
「…千晴お兄ちゃま…!」

昨夜、千晴は大学の会合で帰宅が遅かった。
だからまだ寝ているとばかり思っていたのだ。
千晴は腕を組んで玄関ホールに佇んでいた。
生成りのシャツに濃紺のスラックス。
髪もきちんと整えられている。
…どうやらとっくに起きていたようだ。

千晴が紗耶の姿を見て息を飲んだ。
「…紗耶ちゃん…。その格好…」
「…あ…」

…千晴には内緒で出かけるつもりだったのだ。
新歓ハイキングのことを、まだ打ち明けてはいなかった。
…もちろん、このカジュアルな洋服やスニーカーもクローゼットに隠していた。
秘密にしなくてもいいのだが、なんとなく良い貌はされないような気がしたのだ…。

「紗耶ちゃん。その服、どうしたの?
どこに行くの?」
口調はとても優しいが、その端正な眼は少しも笑ってはいない。

紗耶は唇をきゅっと結び、おずおずと告げた。

「…サークルの新歓ハイキングに行ってきます」
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