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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
山上駅でリフトを降りてからは、なだらかな山道をひたすら歩く。
一号路は舗装された道が殆どなので、初心者にも易しいコースらしい。
…けれど、普段全く運動しない紗耶はのろのろと着いてゆくので精いっぱいだ。
サークルの仲間は
「サーヤちゃん、頑張って〜!」
「隼人!サーヤちゃんは頼んだぞ!
俺たちはタイムトライアルしてっから。
さらばだ!」
と、口々に叫ぶと殆どマラソンのような速さで駆け上がってゆく。
「サーヤ、上で待ってるよ」
梢は金髪パーマをきりりと結い上げ、いわゆる山ガールスタイルで颯爽と登ってゆく。
普段の気怠さは1ミリも感じられない。
「アネゴはああ見えて高校の時はワンダーフォーゲル部だったのさ」
隼人が教えてくれた。
「ゆっくりでいいから、無理すんな」
隼人が紗耶に歩調を合わせ声をかけてくれる。
「…すみません…。先に…行っていいですよ…。
道は迷わないと思いますし…」
遠慮する紗耶の頭を隼人はぽんと叩いた。
「気にすんな。みんなが先に行きたいのは山頂のビアガーデンで早く一杯やりたいからさ。
あいつらそれが楽しみで毎年登ってるからな」
「…へえ…。ビアガーデンもあるんですね」
高尾山て面白いな…と感心する。
「そ。食べ放題飲み放題。眺めはいいし、登ってきて良かったて思うさ。
あいつらとはビアガーデンで集合だから、俺たちはゆっくり登ろう」
「はい。ありがとうございます」
…隼人先輩は優しいな…と、紗耶の心はふんわり温かくなる。
少し前を行くすらりと背の高い隼人を見上げる。
…引き締まった俊敏そうな長身、高校までバスケットボールをやっていたというその身体はいかにも運動能力が高そうでしなやかだ。
…お貌もきりっとしていてハンサムだし、ギターもお上手だし、無愛想だけど、優しいし…きっとモテるんだろうな…。
幼稚園から大学に入るまでずっと女子校だった紗耶は男性には疎いが、それでも隼人がずば抜けて好青年であることは分かる。
…恋人とか…いないのかな?
アネゴ…は違うだろうから、専攻のクラスとかにいらっしゃるのかしら…。
「どした?紗耶。疲れたか?」
無言の紗耶を心配したのか隼人が振り返った。
紗耶は慌て首を振る。
そうして、思い切って尋ねてみた。
「いいえ…。
…あのう…。隼人先輩は、恋人はいらっしゃるんですか?」
隼人のスニーカーの脚が止まった。
一号路は舗装された道が殆どなので、初心者にも易しいコースらしい。
…けれど、普段全く運動しない紗耶はのろのろと着いてゆくので精いっぱいだ。
サークルの仲間は
「サーヤちゃん、頑張って〜!」
「隼人!サーヤちゃんは頼んだぞ!
俺たちはタイムトライアルしてっから。
さらばだ!」
と、口々に叫ぶと殆どマラソンのような速さで駆け上がってゆく。
「サーヤ、上で待ってるよ」
梢は金髪パーマをきりりと結い上げ、いわゆる山ガールスタイルで颯爽と登ってゆく。
普段の気怠さは1ミリも感じられない。
「アネゴはああ見えて高校の時はワンダーフォーゲル部だったのさ」
隼人が教えてくれた。
「ゆっくりでいいから、無理すんな」
隼人が紗耶に歩調を合わせ声をかけてくれる。
「…すみません…。先に…行っていいですよ…。
道は迷わないと思いますし…」
遠慮する紗耶の頭を隼人はぽんと叩いた。
「気にすんな。みんなが先に行きたいのは山頂のビアガーデンで早く一杯やりたいからさ。
あいつらそれが楽しみで毎年登ってるからな」
「…へえ…。ビアガーデンもあるんですね」
高尾山て面白いな…と感心する。
「そ。食べ放題飲み放題。眺めはいいし、登ってきて良かったて思うさ。
あいつらとはビアガーデンで集合だから、俺たちはゆっくり登ろう」
「はい。ありがとうございます」
…隼人先輩は優しいな…と、紗耶の心はふんわり温かくなる。
少し前を行くすらりと背の高い隼人を見上げる。
…引き締まった俊敏そうな長身、高校までバスケットボールをやっていたというその身体はいかにも運動能力が高そうでしなやかだ。
…お貌もきりっとしていてハンサムだし、ギターもお上手だし、無愛想だけど、優しいし…きっとモテるんだろうな…。
幼稚園から大学に入るまでずっと女子校だった紗耶は男性には疎いが、それでも隼人がずば抜けて好青年であることは分かる。
…恋人とか…いないのかな?
アネゴ…は違うだろうから、専攻のクラスとかにいらっしゃるのかしら…。
「どした?紗耶。疲れたか?」
無言の紗耶を心配したのか隼人が振り返った。
紗耶は慌て首を振る。
そうして、思い切って尋ねてみた。
「いいえ…。
…あのう…。隼人先輩は、恋人はいらっしゃるんですか?」
隼人のスニーカーの脚が止まった。