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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
「…俺のことねえ…。
別に、フツーだよ、フツーフツー」
…そう言いながらも、隼人は淡々と語り始めてくれた。
…高校までバスケとロックに夢中だったこと。
ギターは独学でマスターしたこと。
カート・コバーンを神と崇めていること。
家は博多にある創業百二十年の老舗水炊き屋であること。
父親は頑固一徹な職人肌だが、家族には優しいこと。
博多冷泉町の元芸者の母親はとにかく明るく元気で従業員や家族を纏め、父親を尻に敷いていること。
家を継ぐ為に京都の料亭に修業に出ている兄の他にまだ小学生の双子の妹がいること。
双子の妹たちはたまに東京に遊びに来るのでその時は、ディズニーランドや原宿に連れて行ってやるのだと、少し照れながら隼人は語った。
「…お母様は芸者さんだったんですか…!
芸者さんて、今もいらっしゃるんですね」
映画やドラマだけの世界かと思っていたのだ。
「そ。博多券番て、いわゆる芸者さんの芸能プロダクションみたいなとこがあって、そこで三味線の先生兼芸者をしてたんだってさ。
で、友だちに連れられて親父の店に来て、親父が母親に一目惚れしちゃってさ。
親父は普段ほんとに無口なんだけど猛烈に母親を口説き落として、結婚したらしい。
だから親父は今も母親に頭が上がんないの」
「…へえ…。お母様、お綺麗なんでしょうね…」
博多美人の粋な着物姿が思い浮かぶ。
隼人はあっさりと首を振った。
「全然。コロコロ太ってるし、貌は不二家のペコちゃんそっくりだよ。
親父はそこが可愛い!てさ。…ヘンタイだろ?
…でもさ、親父は母親のハートに惚れたらしいんだよなあ。
とにかく気配りができてよく笑って、周りを明るくするパワーみたいなのに惹かれたんだってさ。
母親も『お父さんはあたしがいないとなんもできん人やけん、仕方なか。嫁に行ってやるばい!て嫁に来たとよ』なんて言いながら、嬉しそうに世話焼いてるよ。
ありゃ、破れ鍋に綴じ蓋な夫婦だな」
話からも、仲睦まじそうな夫婦仲や賑やかな家族の様子が想像できて、微笑ましい。
…そして、少し羨ましい。
…お父様はお母様に夢中だけれど…
お母様は…。
お母様は、お父様を愛しているのだろうか…。
美しい母と千晴の面影が同時に浮かび、胸が苦しくなる。
…隼人の声が聞こえてきた。
「俺の話はまあ、こんなもんだな。
…次は…俺は、お前の話が聞きたいな」
別に、フツーだよ、フツーフツー」
…そう言いながらも、隼人は淡々と語り始めてくれた。
…高校までバスケとロックに夢中だったこと。
ギターは独学でマスターしたこと。
カート・コバーンを神と崇めていること。
家は博多にある創業百二十年の老舗水炊き屋であること。
父親は頑固一徹な職人肌だが、家族には優しいこと。
博多冷泉町の元芸者の母親はとにかく明るく元気で従業員や家族を纏め、父親を尻に敷いていること。
家を継ぐ為に京都の料亭に修業に出ている兄の他にまだ小学生の双子の妹がいること。
双子の妹たちはたまに東京に遊びに来るのでその時は、ディズニーランドや原宿に連れて行ってやるのだと、少し照れながら隼人は語った。
「…お母様は芸者さんだったんですか…!
芸者さんて、今もいらっしゃるんですね」
映画やドラマだけの世界かと思っていたのだ。
「そ。博多券番て、いわゆる芸者さんの芸能プロダクションみたいなとこがあって、そこで三味線の先生兼芸者をしてたんだってさ。
で、友だちに連れられて親父の店に来て、親父が母親に一目惚れしちゃってさ。
親父は普段ほんとに無口なんだけど猛烈に母親を口説き落として、結婚したらしい。
だから親父は今も母親に頭が上がんないの」
「…へえ…。お母様、お綺麗なんでしょうね…」
博多美人の粋な着物姿が思い浮かぶ。
隼人はあっさりと首を振った。
「全然。コロコロ太ってるし、貌は不二家のペコちゃんそっくりだよ。
親父はそこが可愛い!てさ。…ヘンタイだろ?
…でもさ、親父は母親のハートに惚れたらしいんだよなあ。
とにかく気配りができてよく笑って、周りを明るくするパワーみたいなのに惹かれたんだってさ。
母親も『お父さんはあたしがいないとなんもできん人やけん、仕方なか。嫁に行ってやるばい!て嫁に来たとよ』なんて言いながら、嬉しそうに世話焼いてるよ。
ありゃ、破れ鍋に綴じ蓋な夫婦だな」
話からも、仲睦まじそうな夫婦仲や賑やかな家族の様子が想像できて、微笑ましい。
…そして、少し羨ましい。
…お父様はお母様に夢中だけれど…
お母様は…。
お母様は、お父様を愛しているのだろうか…。
美しい母と千晴の面影が同時に浮かび、胸が苦しくなる。
…隼人の声が聞こえてきた。
「俺の話はまあ、こんなもんだな。
…次は…俺は、お前の話が聞きたいな」