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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
「…母は、自宅でアロマテラピーのお教室を開いています。
生徒さんもたくさんいて、最近はカルチャーセンターの講師も始めて…人気のアロマテラピストのようです。
…娘の私が言うのもおかしいですけれど、母は大変に美しいひとです。
綺麗で優雅で聡明で優しくて、仕事も家事も育児も決して手を抜かない…非の打ち所のない完璧な母です」
隼人は眼を丸くした。
「すげえな…!
すっぴんはマジホラー映画とかダイエットが1日しか続かないとか『愛の不時着』のヒョンビンに夢中になってファンクラブ入るとか子どもが成績悪いと雑誌丸めて頭ブン殴るとか、ないのか?」
「…そんなことなさるんですか?」
紗耶が眼を丸くする番だ。
「…ま、ウチのお袋だけかもしんねえけどな…。
続けて」
促され、紗耶は再び紫織に思いを馳せる。
「…私、小さな頃はもっと人見知りが酷くて、家族以外の人とはお話もできないような内気で泣き虫で…ダメな子どもだったんです。
でも母は、そんな私のことで怒ったりがっかりすることはありませんでした。
いつも優しく辛抱強く見守ってくれて…ありがたかったです」
…本当に、そうだ。
お母様はいつも優しい。
完璧な母のもとに生まれた、不出来な娘に失望することもなく、ずっと変わらぬ愛情を注いでくれている…。

「ふうん…。そういうお伽話の王妃様みたいなお袋さんもいるんだなあ…」
…お伽話…。
確かに、そうかも知れない…。
お母様は、美しい物語の主人公のような方だもの…。

「で?その完璧なお母様は、紗耶の婚約だか結婚だかをどう思っているわけ?
喜んでるの?」
隼人の一言にどきりとする。

「…お母様は…」
紗耶は眼下に広がる東京のミニチュア風景に眼を遣る。

…この中の風景のどこかに、お母様がいる…。

なんだか千晴同様に、紫織の存在が遠くに思えた。




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