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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
「…本当のことを言うと、私は母の気持ちが分かりません…」
「へ?」
きょとんとした眼差しの隼人に、紗耶は言葉を選びながら説明する。
「私は母が大好きですけれど…もしかしたら、母は私のことを心の底では疎ましく思っているかもしれません…」
口に出すと、それが真実のような気がして、紗耶は少し空おそろしくなる。
「どういうことだよ?」
隼人が眉を潜めた。
「話を聞いていると、お前のお袋さんくらい完璧で優しい母ちゃんは世の中にはいねえよ。
大抵の母親は年がら年中子どもの愚痴を言ったり、子どもと喧嘩したりしてるもんだ」
「…そう…ですよね…。
私は母の嫌な貌を見たことは一度もありません。
母はいつでも誰に対してもにこやかで、不機嫌になったこともありません…。
私にもそうです。
いつも私を大切にしてくれて、私を愛してくれました。
…多分、今も…」
…けれど…。

…あの日…、
千晴が紗耶を選んだあの日…。

千晴に不意に唇を奪われていた紫織…。
千晴を拒みながらも、その声と表情はどこか切なげで…そしてぞっとするほどに艶めいていたのだ。

…お母様は、もしかしたら、千晴お兄ちゃまを愛していらっしゃるのではないかしら…。

最近、ふと思うのだ。
…もし、お母様が千晴お兄ちゃまを愛していらっしゃるなら…。

私のことを、どんな思いで見ていらっしゃるのだろうか…と。

紫織の誰よりも美しく、月の光のように冴え冴えと輝くような貌の裏側に、何があるのか…。

「…お母様は、本当に私を愛してくださっているのか…。
時々、分からなくなるのです…」

さながら独り言のように漏れた言葉に、隼人は驚きはしなかった。

「…親子なんて、そんなもんなんじゃないのか?」
ベンチからゆっくりと立ち上がり、展望デッキの前で大らかに伸びをする。
「親子ったって、所詮は別々の人間だ。
100パーセント分かり合うことなんかできねえよ。
大事なのは、お前がお袋さんを好きかどうか…。
それで充分なんじゃないか?」
隼人が振り返り、白い歯を見せる。
「…お袋さんのこと、好きなんだろ?」
紗耶は反射的に頷いていた。
「大好きです」

その答えに隼人の方が嬉しそうに笑った。
「じゃ、それでいいじゃん」

…そして
「そろそろ行くか。
他の奴らがいい加減、痺れを切らしてるだろ」
と、淡々とキャップを被り直したのだった。




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