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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
高尾山薬王院の参道を進み、急勾配な男坂を登る。
薬王院境内には古式床しい神社や寺院が点在していた。
こうしてみると高尾山は古来から信仰の山として崇められ、信心深い人々の心の拠り所となっていたことが分かる。
紗耶は隼人に案内されながら丁寧にお参りをした。
薬王院神社の社務所でお守りを購入する。
…千晴お兄ちゃまに差し上げよう。
お兄ちゃまがお元気でお過ごしになれますように…。
少し迷ったが、色違いのお守りを自分用に購入した。
…お揃いだわ…。
こんな些細なことでも心が浮き立つように嬉しい…。
千晴の端麗な面影とともに、初めての甘やかなキスが思い出され、紗耶は人知れず頰を染めた…。
…帰ったらお兄ちゃまに、どんな貌をしたら良いのかしら…。
少し困ってしまう。
参道を過ぎた辺り、なだらかな山道の傍らにある野草園には隼人が言っていた高尾山でしか見かけないと言う希少なタカオスミレの花がひっそりと咲いていた。
その可憐な小さな花に、ほっと心が和む。
「菫…本当に綺麗ですね…。
白い菫は初めて見ました」
感激する紗耶に
「だろ?これだけを目当てに登山するひともいるらしいぜ。
見られて良かったな」
隼人が優しく目配せをした。
「あれを登りきれば山頂だ」
隼人が指差す先には、最後の二百段の石段だ。
「…はあ…」
すっかりばててしまった紗耶は、隼人に手を引かれながら登り始めた。
「頑張れ。あと少しだ」
「…は、はい…」
遥か先、石段の頂上から聞き慣れた賑やかな声が響き渡る。
「お〜い!サーヤ!頑張れ〜!あと少しだぞ〜!」
「隼人王子様〜!サーヤ姫をオンブしてあげて〜!」
先に着いたサークルのメンバーたちが口々に陽気に叫んでいた。
「うるせえ。するか!アホ!」
隼人がドスを効かせる。
「…隼人先輩…先…行ってくださっていいですよ…」
息を弾ませながら、隼人の手を遠慮勝ちに離そうとする。
自分の世話係のようになってしまい、恥ずかしいのではないだろうか…と心配になる。
「気にすんな。
…ほら、行くぞ」
隼人の大きな手が力強く握り直される。
「…はい…!」
…やっぱり、隼人先輩と一緒にいると居心地が良いな…と、紗耶はくすぐったいような、嬉しいような…甘酸っぱい気持ちになった。
抜けるような青空の頂上は、あと少しだ。
薬王院境内には古式床しい神社や寺院が点在していた。
こうしてみると高尾山は古来から信仰の山として崇められ、信心深い人々の心の拠り所となっていたことが分かる。
紗耶は隼人に案内されながら丁寧にお参りをした。
薬王院神社の社務所でお守りを購入する。
…千晴お兄ちゃまに差し上げよう。
お兄ちゃまがお元気でお過ごしになれますように…。
少し迷ったが、色違いのお守りを自分用に購入した。
…お揃いだわ…。
こんな些細なことでも心が浮き立つように嬉しい…。
千晴の端麗な面影とともに、初めての甘やかなキスが思い出され、紗耶は人知れず頰を染めた…。
…帰ったらお兄ちゃまに、どんな貌をしたら良いのかしら…。
少し困ってしまう。
参道を過ぎた辺り、なだらかな山道の傍らにある野草園には隼人が言っていた高尾山でしか見かけないと言う希少なタカオスミレの花がひっそりと咲いていた。
その可憐な小さな花に、ほっと心が和む。
「菫…本当に綺麗ですね…。
白い菫は初めて見ました」
感激する紗耶に
「だろ?これだけを目当てに登山するひともいるらしいぜ。
見られて良かったな」
隼人が優しく目配せをした。
「あれを登りきれば山頂だ」
隼人が指差す先には、最後の二百段の石段だ。
「…はあ…」
すっかりばててしまった紗耶は、隼人に手を引かれながら登り始めた。
「頑張れ。あと少しだ」
「…は、はい…」
遥か先、石段の頂上から聞き慣れた賑やかな声が響き渡る。
「お〜い!サーヤ!頑張れ〜!あと少しだぞ〜!」
「隼人王子様〜!サーヤ姫をオンブしてあげて〜!」
先に着いたサークルのメンバーたちが口々に陽気に叫んでいた。
「うるせえ。するか!アホ!」
隼人がドスを効かせる。
「…隼人先輩…先…行ってくださっていいですよ…」
息を弾ませながら、隼人の手を遠慮勝ちに離そうとする。
自分の世話係のようになってしまい、恥ずかしいのではないだろうか…と心配になる。
「気にすんな。
…ほら、行くぞ」
隼人の大きな手が力強く握り直される。
「…はい…!」
…やっぱり、隼人先輩と一緒にいると居心地が良いな…と、紗耶はくすぐったいような、嬉しいような…甘酸っぱい気持ちになった。
抜けるような青空の頂上は、あと少しだ。