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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
タクシーを屋敷の正面門扉前に着けてもらう。
高く聳える意匠が凝らされた青銅の門扉を見上げた初老のタクシーの運転手が眼を丸くし、呟いた。
「…こりゃあ、すごいお屋敷だ…」
タクシー料金を支払い、隼人にお礼を言う。
「ありがとうございました。
…せっかくの新歓ハイキングだったのに…私のせいで隼人先輩にご迷惑をおかけしてしまって…」
「家の玄関まで送る。
…門から家まで遠いんだろ?豪邸だからな」
言うが早いか、隼人はさっさと降りるとぽかんとしている紗耶を勝手に背負いだした。
「あ、あの…!だ、大丈夫です…私、これくらい歩けます!」
隼人の背中の上で紗耶は焦る。
…お兄ちゃまに見られたら…大変だわ…!
「捻挫は早めの手当てが肝心なんだよ。
今無理すると、あとで響くぞ」
「…で、でも…」
押し問答しているうちに、門扉のインターフォン前に着いてしまった。
「早く押せ」
促され仕方なくボタンを押す。
直ぐに家政婦八重の声で応答がある。
「はい。どちら様でしょうか?」
小声で話しかける。
「…八重さん?紗耶です…」
「紗耶様?
まあ…!いったいどうなさったのですか⁈」
滅多に聞くことはない八重の驚きに満ちた声が響いた。
…中のモニターには、隼人に背負われている紗耶の姿が映っているのだろう。
「…なんでもないの…。
とりあえずゲートを開けてもらえるかしら?」
遠慮勝ちに頼むと同時に、がちゃりとロックが解除される。
オートマティックに門扉が開く。
「…すげえ…」
隼人が感嘆したような声を上げる。
「中に入ってください。
お茶だけでも召し上がっていらしてください」
…一日中世話をしてもらったのだ。
お茶くらいでは、申し訳ないけれど…。
「んなのいいよ。まずお前、足の手当てしなきゃな…」
…すたすたと歩いていた隼人の脚が、不意に止まった。
隼人の背中の上、紗耶は貌を上げ息を飲んだ。
…重厚な玄関ドアが開き、中から千晴が慌ただしく出てきた。
「…お兄ちゃま…」
…見たこともないほどに険しい表情をした千晴が、大股でこちらに向かって来るのだった。
高く聳える意匠が凝らされた青銅の門扉を見上げた初老のタクシーの運転手が眼を丸くし、呟いた。
「…こりゃあ、すごいお屋敷だ…」
タクシー料金を支払い、隼人にお礼を言う。
「ありがとうございました。
…せっかくの新歓ハイキングだったのに…私のせいで隼人先輩にご迷惑をおかけしてしまって…」
「家の玄関まで送る。
…門から家まで遠いんだろ?豪邸だからな」
言うが早いか、隼人はさっさと降りるとぽかんとしている紗耶を勝手に背負いだした。
「あ、あの…!だ、大丈夫です…私、これくらい歩けます!」
隼人の背中の上で紗耶は焦る。
…お兄ちゃまに見られたら…大変だわ…!
「捻挫は早めの手当てが肝心なんだよ。
今無理すると、あとで響くぞ」
「…で、でも…」
押し問答しているうちに、門扉のインターフォン前に着いてしまった。
「早く押せ」
促され仕方なくボタンを押す。
直ぐに家政婦八重の声で応答がある。
「はい。どちら様でしょうか?」
小声で話しかける。
「…八重さん?紗耶です…」
「紗耶様?
まあ…!いったいどうなさったのですか⁈」
滅多に聞くことはない八重の驚きに満ちた声が響いた。
…中のモニターには、隼人に背負われている紗耶の姿が映っているのだろう。
「…なんでもないの…。
とりあえずゲートを開けてもらえるかしら?」
遠慮勝ちに頼むと同時に、がちゃりとロックが解除される。
オートマティックに門扉が開く。
「…すげえ…」
隼人が感嘆したような声を上げる。
「中に入ってください。
お茶だけでも召し上がっていらしてください」
…一日中世話をしてもらったのだ。
お茶くらいでは、申し訳ないけれど…。
「んなのいいよ。まずお前、足の手当てしなきゃな…」
…すたすたと歩いていた隼人の脚が、不意に止まった。
隼人の背中の上、紗耶は貌を上げ息を飲んだ。
…重厚な玄関ドアが開き、中から千晴が慌ただしく出てきた。
「…お兄ちゃま…」
…見たこともないほどに険しい表情をした千晴が、大股でこちらに向かって来るのだった。