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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
「お兄ちゃま…!あんな仰り方はないわ…!
隼人先輩に失礼よ」
紗耶の抗議に千晴は耳を貸そうとはしなかった。
硬い表情に透けて見えるのは、明らかに怒りの色だ。
「黙っておいで。暴れないで。
でないと落ちるよ」
言葉は丁寧だが声は冷ややかだ。
こつこつと大理石の床の上を癇性に靴音を鳴らしながら、千晴は正面の大階段を上がる。

八重が慌てて声を掛ける。
「旦那様、いかがなさいました?」
「八重。僕の部屋に氷と…救急箱を置いておいてくれ」
「かしこまりました」
千晴の様子から只事ではないと察し、八重は直ぐに引き下がる。

「どちらにいらっしゃるの?お兄ちゃま…」
不安げに尋ねる紗耶に脚を止め、じっと見つめたのち…千晴はようやく表情を柔らげた。

「…紗耶ちゃんの部屋だよ。
捻挫した脚で歩かない方が良いからね。
…だからじっとしていて」
…その眼差しには混じり気のない労わりと優しさがあった。
紗耶は少し安堵し、素直に頷いた。

そうして、千晴はそのまま軽々と大階段を駆け上がり、紗耶の部屋に向かっていった。

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