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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
…千晴の部屋に入るのも、紗耶は初めてのことだった。
未婚の女性はみだりに大人の男性の部屋に足を踏み入れてはならないからだ。
婚約者とは言え、千晴も例外ではなかった。

中に入った途端、伽羅の薫りのルームフレグランスがふわりと紗耶を押し包む。

…お母様の調香だわ…。
千晴の身の廻りのアロマは昔からすべて紫織が誂えているのだから当たり前なのだが、不意に胸が苦しくなる。

二十畳ほどの広い居間に続く寝室に、抱き上げられたまま運ばれる…。

ガレやラリックの硝子調度品やランプが琥珀色の柔らかな光を放っている。
…飾られている絵画は、レンブラントだ…。

寝台には広いキングスサイズのダブルベッドのみが置かれていた。
射干玉色の天蓋とシーツが敷き詰められ、そこはまるで深い夜の天空のようであった。

…ベッドに降ろされるのかと身構えた紗耶を他所に、千晴は軽やかに奥に進んだ。

最奥は打って変わって、全て白一色で統一された洗面所とバスルームであった。
広い洗面所のイタリア大理石の床に、紗耶は丁寧に降ろされた。

「…バスの使い方は、紗耶ちゃんのお部屋のと同じだよ。
分かるよね?
中にバスソルトと香油があるけれど、好きなものを使って。
薫りは白檀と沈香と梅香…かな。
…石鹸やシャンプーなんかも紫織さんの配合のものだから、とても薫りが素晴らしくて使い心地が良いよ」
優しく微笑まれ、少し嫉妬する。

黙り込んだ紗耶の貌を覗き込み…
「…それとも僕が洗ってあげる?
一緒に入る?」
悪戯っぽく微笑まれ
「い、いいです!ひとりでできます!」
慌てて首を振り、バスルームの扉を閉めた。

「脚に負担を掛けないようにね。
…ゆっくり入っておいで」
扉の外から、笑いの混じった優しい声が響いてきた…。
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