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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
…お兄ちゃまのお気持ちが分からない…。

白いイタリア製の陶器のゆったりとしたバスタブに菫色のバスソルトを溶かし入れ、紗耶は湯に浸かりながらため息をついた。

温かな湯気とともに、白檀の妙なる薫りが浴室に静かに広がる…。

…隼人先輩に嫉妬…してくださっているのは分かるわ…。
でも、キスして…私をお部屋に連れていらして…どうなさるおつもりなのかしら…。

紗耶はそっと唇に触れる。

今しがた千晴に奪われた唇は、やけどしそうに熱く、熱を帯びている…。

…まだ唇を触れ合わせるだけのキスだった…。

けれどその先は…

…お仕置き…て、何…?

胸の奥がきゅっと甘い痛みを伴って疼く。

紗耶は千晴や父が思うほど、初心でも何も知らないわけでもない。
キスの先にある男女の営みも、どのようなことが為されるのか、朧げながら分かっている。

父、政彦は紗耶の純潔を守ることを千晴に約束させたが、紗耶は千晴から本当に愛されているのならば、身を任せても構わないと思っている。

…ううん…。
違うわ…。

菫色のとろりとした湯の中で揺らめく、白くか細く未成熟な身体を抱きしめる。

…私は、お兄ちゃまと結ばれたいのだ…。
身も心も結ばれたいのだ…。

そのはしたなさと羞恥心に、身体が桜色に染まる。

…けれど…。

愛されているけれど、その愛を信じきれない切なさに、瞳が潤む。

…お兄ちゃまが私を…誰よりも愛してくださっているのなら…。

菫色の湯からは、紫織が配合した白檀の薫りがふわりと立ち昇る…。

その麗しい薫りは、美しい母そのものだ。
…紗耶の前に常に佇み、立ち塞がる…決して超えられない壁…。

紗耶はそっとため息を吐き、ぱしゃぱしゃとわざと荒っぽく音を立てて貌を洗った。



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