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異邦人の庭 〜secret garden〜
第2章 ブルームーンの秘密
徳子は、毎年自分の誕生日に一族の子女を集めお茶会を主宰した。
…紗耶が叱責されたというのは、昨年のお茶会での出来事だ。

高遠家の美しい英国式庭園で、恒例のお茶会は開かれる。
広いテーブルにかけられたリネン、初夏の濃い陽射しを遮る白い麻布の大きな天幕、テーブルに並ぶ食器や茶器は代々高遠家に伝わる年代物のウェッジウッドだ。

紗耶はスコーンや胡瓜のサンドイッチにも手をつけず、お茶の味すらも分からないほどに緊張していた。

傍らの紫織が時折、そっとテーブルの下で手を握ってくれるのが唯一の励みであった。

…向かい側の席に、千晴が座っているのも緊張の一因であった。
二十五歳の千晴は東大大学院を卒業し、出身高校の理事に乞われ、星南学院大学の文学部の准教授として勤め始めていた。
初夏の品の良いジャケットに身を包んだ千晴は、紫織や紗耶に何くれとなく優しく話しかけてくれるが、紗耶は緊張しすぎて一言も話せなかった。

華子が腹立たしげに眉を顰める。
「千晴お兄ちゃまってば!二宮の伯母様と紗耶ちゃんばかり贔屓!私の話も聞いてちょうだいってば!」
華子はずっと千晴に夢中なのだ。
「はいはい。お姫様。何かな?」
千晴は誰に対しても穏やかで優しい…。
…紗耶の胸はちくりと痛む。


お茶会の終盤に徳子は子どもたちに今、何に興味を持っているかを尋ねていった。

徳子のお茶会は、ただの祝いの席ではない。
子どもたち…いや、その家のアピールをする格好の場なのだ。
その家の子どもに対する教育が如何に優れているか、如何に財力を掛け、優秀な人間に育てようとしているか…引いては、その家が徳子がこれから眼を掛けてゆくのに足りる価値を持っているかを詳らかにされる場なのだった。

全てを心得ている華子は
「クラシックバレエのコンクール入賞を目指して毎日お稽古に励んでいます。
それから、私は生徒会の会長を務めているのでその活動と、海外ボランティアにもこれから参加しようと思っています。
ソマリアの難民支援に興味があります」
と、淀みなく述べた。
華子の母はやや得意げに眉を上げた。

「視野が広くて素晴らしいこと。これからの貴女の活躍を期待しますよ」
古代紫に大輪の薔薇が描かれた高価なアンティークドレスに身を包んだ徳子は薄く形の良い唇に微かな笑みを浮かべた。

…そして…

「…次は紗耶。貴女はどうですか?」


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