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異邦人の庭 〜secret garden〜
第8章 ガブリエルの秘密の庭
朝食の後片付けや掃除は通いの家政婦のテルの仕事だ。
洗濯は二人分だけだから、朝食の支度の合間に終えてしまった。

紗耶がいたときはお弁当作りから始まり、紗耶の髪を結ってあげたり、身支度を整えたり、忘れ物はないかのチェックなど…朝は慌ただしかったが、今はエアポケットに入ったかのようにぽっかりと暇になった。

今日は夕方にアロマの教室がひとつあるだけだから、時間はまだ余裕がある。
紫織はサンルームの階段を降り、ゆっくりと庭に出た。

…紗耶が残していった蔓薔薇たちが、少しずつ枯れ始めていた。
けれど、朝の水撒きの雫がやや色褪せた花に生気を与えているようだ。

夏に咲く薔薇はあるが、紗耶が植えて行った薔薇は蔓薔薇が多く、殆どが一季咲きである。

もっとも、中には何度か返り咲く花もあるので、水撒きや手入れは欠かせない。

…中でも、薄紫色を秘めた白い薔薇、ガブリエルの鉢は、手入れに気を使う。

『この薔薇、お母様みたいでしょう?
美しくてどこか神秘的で魅力的で…何よりとても良い薫りがするの。
だから大好きなの』
紗耶が嬉しそうに、殊の外、大切にしていた薔薇だ。

…私みたい…か…。

紗耶は素直な心優しい娘だ。
その無垢で純粋な性格は母親の自分ですら、感心するほどだ。

けれど、その娘は今は手元にいない。

…いつも私の側から離れられなくて…ずっと一緒に過ごしていたのに…。

ガブリエルの白い花弁をそっと撫で、微笑む。

…大人しくて、内気で、寡黙で、泣き虫さんで…。
私が居なくては、何も出来なかったのに…。

その娘は、自分の元から驚くほどにするりとしなかやに巣立ってしまった…。

…恋の翼を身に借りて…かしらね…。

ロミオとジュリエットの有名な台詞を思い出す。

寂しさと…それから誰にも語ることができない…複雑な気持ちを、紫織は最近ずっと抱き続けている。
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