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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
…その高校教師、藤木芳人が紫織の通う聖ベルナデッタ女学院に赴任して来たのは、その年の春のことだった。
産休に入り、そのまま辞めた女教師の代わりの赴任だった。

月曜の朝のミサのあと、学院長のシスターテレーズに促され、壇上で挨拶をした藤木を見た瞬間、紫織はうっすらとした興味を持った。

…長身でひょろりと細身な身体をやや猫背気味に丸め、すたすたと壇上に上がり、彼は淡々と挨拶をした。

「初めまして。藤木芳人です。
昨年まで、アメリカのコロンビア大学で香料の研究をしていました。
担当は化学です。
よろしくお願いします」

…意外なほどの低音の美声で、しかし、愛想も何もない短い挨拶を終えると、少し寝癖の付いた髪を搔き上げながらぺこりとお辞儀をした。
辛うじて地味だが仕立ての良さげなスーツを着ているが、如何にも着慣れていない様子…。
大勢の女子高生たちに見つめられ、藤木は居心地悪そうに肩を竦めていた。

…けれど、その表情は飄々としていて、静かな自信のようなものが漂っていた。

「…コロンビア大学だって!すごくない?
しかも、よく見ると結構イケメンじゃない?」
「そうかも。格好ダサいけど…背は高いね。スタイル良さげ。
…あれ、担任は持たないのか…」
残念そうな声も聞こえた。

周りの女学生がひそひそとやや興奮気味に話し続ける。
見回りのシスターが咳払いをし、諌める。

無理もないと、紫織は小さく笑う。
明治からの歴史ある厳格なカトリックのこの女学院は、若い男性教師など滅多に採用しないからだ。

年頃の女子ばかりが集うこの名門校には女性教師か、祖父に近い年齢の男性教師しかいない。
若い男性教師を採用し、生徒と何か間違いがあったらいけないという古臭いナンセンスな考えに凝り固まっているのだろう。

…馬鹿馬鹿しいわ…。
紫織は思う。

若い男性教師がいるだけで何かが起こるなんて…昭和の安っぽい恋愛ドラマみたい。

…ありえない…。
と、思いつつ…

紫織は壇上の若い男性教師を見遣る。
癖なのか、藤木は困ったように髪を搔き上げていた。

…でも、あの寝癖は、ちょっと可愛い…。

心の中で、密かに思った。



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