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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
ルビー色に白い薔薇模様の傘が薄墨色の空の下で、ぱっと花開いた。
…余りに華やかな傘に、藤木は一瞬呆気に取られたようだ。
「…派手で恥ずかしいですか?」
…傘はフランス製のものだ。
商社マンでおしゃれな父親が先月、パリ出張の際にハイブランドなメゾンで土産に買ってきてくれたのだが…いかんせん、よく目立つ。
「あ、いや…そうじゃなくて…」
形の良い唇に微かな笑みが浮かぶ。
「君にぴったりな傘だなあ…て感心してた」
「え?」
驚いて男を見上げる。
「…いや、ごめん。
とても綺麗な傘だね。
親切にありがとう」
笑うと眼を細める癖があるようだ。
そうすると、一層親しみやすい表情になる。
「…でも、いいよ。
君が濡れてしまうし…。
職員室で余っている傘を借りるよ」
…じゃ…と、あっさり踵を返され、紫織は咄嗟にそのやや猫背な背中に叫んでいた。
「あの…!
今、職員室に行くとシスターテレーズに捕まりますよ!
聖書の話。それから日曜学校の勧誘。
延々と終わらなくていいんですか?」
藤木がゆっくりと振り返り、眼を瞬かせた。
「…それは困るな」
…余りに華やかな傘に、藤木は一瞬呆気に取られたようだ。
「…派手で恥ずかしいですか?」
…傘はフランス製のものだ。
商社マンでおしゃれな父親が先月、パリ出張の際にハイブランドなメゾンで土産に買ってきてくれたのだが…いかんせん、よく目立つ。
「あ、いや…そうじゃなくて…」
形の良い唇に微かな笑みが浮かぶ。
「君にぴったりな傘だなあ…て感心してた」
「え?」
驚いて男を見上げる。
「…いや、ごめん。
とても綺麗な傘だね。
親切にありがとう」
笑うと眼を細める癖があるようだ。
そうすると、一層親しみやすい表情になる。
「…でも、いいよ。
君が濡れてしまうし…。
職員室で余っている傘を借りるよ」
…じゃ…と、あっさり踵を返され、紫織は咄嗟にそのやや猫背な背中に叫んでいた。
「あの…!
今、職員室に行くとシスターテレーズに捕まりますよ!
聖書の話。それから日曜学校の勧誘。
延々と終わらなくていいんですか?」
藤木がゆっくりと振り返り、眼を瞬かせた。
「…それは困るな」