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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…北川さん、ちょっといい?」
藤木に遠慮勝ちに呼び止められたのは、それから二日後の昼休みのことだった。

紫織はいつものように昼食のお弁当を中庭で食べようと、数人のクラスメートと渡り廊下を歩いていた。

東棟の端、化学準備室から覗く姿は、長躯によれよれの白衣にコットンシャツ、ブラックデニムを身に付けたいつもの飄々とした格好だ。
トレードマークの寝癖を見つけ、紫織はどきりとする。

「…あ…藤木先生…」

「北川さんに配ってもらいたいものがあるんだ。
あとで寄って貰える?」
学級委員長の紫織がプリントや教材を配布することは日常茶飯事だ。
教師たちも何かというとしっかりした紫織に用事を頼む。

すぐさま
「あ、今行きます」
と、返事をして、傍らで興味津々に藤木を見つめる友人たちに
「先に行って食べてて」
と早口に告げる。

藤木は
「悪いね。すぐ済むから…」
穏やかな笑顔で答えると、化学準備室の中にふらりと消えた。
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