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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「はい、これ。こないだはありがとう…」
…差し出されたのは、あの雨の日に貸したローラ・アシュレイの白いレースのハンカチだ。
「皆んなの前で渡すと、君に迷惑を掛けてしまうかな…て思って。
…ここは厳格なお嬢様学校だからね」
飄々としているようで、細やかな気遣いができるひとなのだと、紫織は嬉しくなる。
「…あ…」
眼を見張る紫織に、藤木が少し恥ずかしそうに寝癖の付いた髪を掻き上げる。
「ちゃんと洗ってはあるけど、アイロンは掛かってないんだ。
持ってなくてね…。
ごめん」
「…そんな…。いいですよ」
そう言いながら、紫織は密かに安堵する。
…やっぱり…。
藤木先生は独身だ。
なんとはなしに、心が浮き立つ。
「…あ…」
受け取ったハンカチから、ふわりと、あの日の藤木の薫りがする。
「な、何?どこか汚れてるかな?」
慌てて覗き込む藤木に首を振り、見上げる。
「いいえ。…これ、何だかいい薫りがするんですけど…」
「…そう?」
紫織はハンカチを鼻先に当て、くんくん嗅いでみる。
「…薔薇に菊、百合…それからウッディーな薫りとモッシーな薫りも…」
藤木が嬉しげに眼を輝かせる。
…あ、榛色…!と、紫織はどきどきする。
「よく分かったね。
香料を分析出来るなんて凄いな…」
そうして、藤木は意外なことを口にした。
「…これ、僕がコロンビア大学で研究開発していたオリジナルのアロマなんだ」
…差し出されたのは、あの雨の日に貸したローラ・アシュレイの白いレースのハンカチだ。
「皆んなの前で渡すと、君に迷惑を掛けてしまうかな…て思って。
…ここは厳格なお嬢様学校だからね」
飄々としているようで、細やかな気遣いができるひとなのだと、紫織は嬉しくなる。
「…あ…」
眼を見張る紫織に、藤木が少し恥ずかしそうに寝癖の付いた髪を掻き上げる。
「ちゃんと洗ってはあるけど、アイロンは掛かってないんだ。
持ってなくてね…。
ごめん」
「…そんな…。いいですよ」
そう言いながら、紫織は密かに安堵する。
…やっぱり…。
藤木先生は独身だ。
なんとはなしに、心が浮き立つ。
「…あ…」
受け取ったハンカチから、ふわりと、あの日の藤木の薫りがする。
「な、何?どこか汚れてるかな?」
慌てて覗き込む藤木に首を振り、見上げる。
「いいえ。…これ、何だかいい薫りがするんですけど…」
「…そう?」
紫織はハンカチを鼻先に当て、くんくん嗅いでみる。
「…薔薇に菊、百合…それからウッディーな薫りとモッシーな薫りも…」
藤木が嬉しげに眼を輝かせる。
…あ、榛色…!と、紫織はどきどきする。
「よく分かったね。
香料を分析出来るなんて凄いな…」
そうして、藤木は意外なことを口にした。
「…これ、僕がコロンビア大学で研究開発していたオリジナルのアロマなんだ」