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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…母が…香道を学んでいるので、家中お香が薫れているんです。
これは…その匂いがついちゃったんです…」
…母の暗く冷たく突き放すような匂いがするようで、紫織は日本古来のお香が好きになれないでいた…。
けれど、父の土産の香水を付けると母があからさまに嫌な貌をするので、自然と香水から遠のいていた。
「…なんだか陰気臭いような気がして…」
「そんなことはない。
すごく良い薫りだよ。
沈香と丁子と甲香と白檀、それから麝香と薫陸…。
配分も申し分ない。
…これは一流の香木だな。
君のお母様はセンスが良いね」
…そして…
「…綺麗で優美で…洗練された君に、とてもよく似合っている」
と、少し小さな声で付け加えた。
…凡そ教師が口にするには、らしからぬ賛辞の嵐だが、厭らしさの微塵もない。
ただ素直に優しく褒められているようで、紫織は白い頰を赤らめた。
「…ありがとうございます…」
見上げる紫織と、藤木の眼が合い…なぜか彼はどぎまぎしたように咳払いをした。
そうして
「…ごめんね。昼休みなのに。
もう行っていいよ」
淡々とくるりと背を向けた。
紫織は何となく離れがたくて、わざとずかずかと窓際に面した藤木のデスクに近寄った。
「先生、お昼、何ですか?お弁当?」
「え?」
紫織は興味津々に藤木の昼食を覗き見た。
これは…その匂いがついちゃったんです…」
…母の暗く冷たく突き放すような匂いがするようで、紫織は日本古来のお香が好きになれないでいた…。
けれど、父の土産の香水を付けると母があからさまに嫌な貌をするので、自然と香水から遠のいていた。
「…なんだか陰気臭いような気がして…」
「そんなことはない。
すごく良い薫りだよ。
沈香と丁子と甲香と白檀、それから麝香と薫陸…。
配分も申し分ない。
…これは一流の香木だな。
君のお母様はセンスが良いね」
…そして…
「…綺麗で優美で…洗練された君に、とてもよく似合っている」
と、少し小さな声で付け加えた。
…凡そ教師が口にするには、らしからぬ賛辞の嵐だが、厭らしさの微塵もない。
ただ素直に優しく褒められているようで、紫織は白い頰を赤らめた。
「…ありがとうございます…」
見上げる紫織と、藤木の眼が合い…なぜか彼はどぎまぎしたように咳払いをした。
そうして
「…ごめんね。昼休みなのに。
もう行っていいよ」
淡々とくるりと背を向けた。
紫織は何となく離れがたくて、わざとずかずかと窓際に面した藤木のデスクに近寄った。
「先生、お昼、何ですか?お弁当?」
「え?」
紫織は興味津々に藤木の昼食を覗き見た。