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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…あ…!」
教科書やノート、山のような書類、実験道具に囲まれた中にあったのは缶コーヒーとカロリーメイト1箱…。
それだけだった。

紫織は唖然とした。
「…お昼、これだけですか?」
「…うん、そう」
照れたように人差し指で鼻の頭を掻く。
「いつもそうなんですか?」
「う〜ん…。今日は寝坊しちゃって、コンビニ寄る時間がなくてね…。
でもいつも、まあこんな感じかなあ…」
あはは…と笑う藤木に、紫織は大袈裟に首を振る。
「ダメですよ、そんなの。
ちゃんと栄養取らないと、身体壊しますよ」

そう言いながら、紫織は手に持っているランチボックスを机の上にどんと置いた。
「先生!何かお皿みたいなもの、ありますか?」
「へ?」
「何でもいいから、下に敷くもの」
「あ、ああ…。これは?」
と、実験道具が仕舞われている棚からアルミホイルを取り出した。
「貸してください」
紫織は自分のランチボックスを開けて、きびきびと中味をよそいだした。
…梅干しのおにぎりにアスパラベーコン、小海老のフリッター、ミートローフ、カリフラワーと人参のマリネ、デザートの巨峰…。
「お裾分けです。食べてください」
今まで呆気に取られていた藤木が慌てる。
「い、いや、いいよ。そんな…」
「いいんです。カヨさん…あ、うちの家政婦さんなんですけど、毎日お弁当、作りすぎちゃうんです。
いつも友達に食べてもらっているくらいだから、遠慮なくどうぞ」
にっこり笑ってアルミホイルのお皿に綺麗に盛り付ける。
藤木は思わず眼を丸くした。
「…すごいなあ…」
「カヨさんのお料理は本当に美味しいですよ」
「家政婦さんがいるの?
…やっぱりここはお嬢様学校なんだね…」
しみじみ呟く藤木に
「…うちの父は普通の会社員ですよ。
…ただ…私の母が生け花の教師をしていて忙しいので…。
だから昔から通いの家政婦さんがいるんです」
さらりと説明したが、本当は違う。

お母様はお父様の為に食事の世話や家事をすることが苦痛なのだ。
…いや、きっと、私の世話をすることも…。

紫織は幼稚園の時からずっと、カヨの手作り弁当を持たされていた。
カヨは小さな紫織が喜ぶようにと、毎日可愛らしいお弁当を工夫して作ってくれたものだ…。

「…だから遠慮なく、食べて下さい。
…ていうか、食べなきゃダメです。許しません!」
…と、にんまり笑って脅した。





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