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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「紫織!遅〜い!こっちこっち!」
クラスメイトたちが中庭の欅の樹の下で手を振っている。
紫織は足取りも軽く、彼女たちのもとに駆け寄る。
…五月の風はまさに薫風だ…。
さらさらと紫織の長く美しい髪を撫でるように靡かせる。
「お待たせ」
しなやかに芝の上に座り、ランチボックスをうきうきと開ける。
「遅い遅い。藤木先生と何話し込んでたの?」
「配布するプリントが足りなくて、コピーし直してもらってた」
友人の一人が、紫織のランチボックスを覗き込み、眼を丸くする。
おにぎりもおかずも明らかに減っている…。
「紫織、これ…どした?」
「早弁したの」
うふふ…と紫織は愉しげに笑う。
「…紫織が?珍しい…。
でも、何これ…?」
ランチボックスの中に置かれた唐突なカロリーメイト1袋を怪訝そうに指差す。
「…ヒミツ」
にっこり笑い、アルミのパッケージを開ける。
…「こんなに貰うだけじゃ、申し訳ないよ」
困ったように眉を寄せる藤木に、紫織は提案した。
「じゃあ、これひとつと交換してください」
「…こんなのでいいの?」
済まなそうに藤木はカロリーメイトを手渡した。
…長く美しい指が、紫織の白い掌に微かに触れた…。
ブロック型の、もそもそしたチーズ味のビスケット…。
コンビニなどで見かけても手に取ることもなかったそれが、宝物のように特別に感じる…。
「…美味しい…」
友人たちが不思議そうな貌をする中、紫織は大切そうに口に運んだのだった。
クラスメイトたちが中庭の欅の樹の下で手を振っている。
紫織は足取りも軽く、彼女たちのもとに駆け寄る。
…五月の風はまさに薫風だ…。
さらさらと紫織の長く美しい髪を撫でるように靡かせる。
「お待たせ」
しなやかに芝の上に座り、ランチボックスをうきうきと開ける。
「遅い遅い。藤木先生と何話し込んでたの?」
「配布するプリントが足りなくて、コピーし直してもらってた」
友人の一人が、紫織のランチボックスを覗き込み、眼を丸くする。
おにぎりもおかずも明らかに減っている…。
「紫織、これ…どした?」
「早弁したの」
うふふ…と紫織は愉しげに笑う。
「…紫織が?珍しい…。
でも、何これ…?」
ランチボックスの中に置かれた唐突なカロリーメイト1袋を怪訝そうに指差す。
「…ヒミツ」
にっこり笑い、アルミのパッケージを開ける。
…「こんなに貰うだけじゃ、申し訳ないよ」
困ったように眉を寄せる藤木に、紫織は提案した。
「じゃあ、これひとつと交換してください」
「…こんなのでいいの?」
済まなそうに藤木はカロリーメイトを手渡した。
…長く美しい指が、紫織の白い掌に微かに触れた…。
ブロック型の、もそもそしたチーズ味のビスケット…。
コンビニなどで見かけても手に取ることもなかったそれが、宝物のように特別に感じる…。
「…美味しい…」
友人たちが不思議そうな貌をする中、紫織は大切そうに口に運んだのだった。