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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
…翌日、紫織は少し早く登校し、誰もいない化学準備室にするりと忍び込んだ。

…誰かに見られたら、通報されるわ…。
そう考えると可笑しくてくすくす笑ってしまう。

相変わらず雑然とした藤木の机の上に、そっとランチボックスを置いた。
…小さなメモを添えて…。

「ついでだから先生の分も作りました。
味は保証しません。悪しからず。北川」

どきどきしながら素早く準備室を出て、階段を駆け下りる。

こんなに緊張したことも、高揚したことも、生まれて初めてだ。

驚くかな?迷惑がるかな?
…それとも…喜んでくれるかな?

向こう見ずで大胆な行動を、けれど紫織は後悔はしなかった。
ただひたすらこの想いが、藤木にとどくようにと、密かに祈っていた。

…その想いに、名前を付けることすら、まだできなかったというのに…。



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