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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
…気がつくと、紫織は夜の電車にぼんやりと揺られていた。
激しく降り注ぐ雨に、駅に着くまで髪も制服も濡れてしまったので他の乗客から離れて、ドア前に佇む。
…窓の外はすっかり暮れて、墨を流したような夜の景色だ。
トランプのカードを切るように過ぎてゆく家々には、暖かな灯りが灯っている。
…けれど、今の紫織には、帰る場所がどこにもない…。
父は仕事でデュッセルドルフだ。
父方の祖父母は紫織をとても可愛がってくれるが、札幌に住んでいる。
高校生が簡単に会いに行ける距離ではない。
…どこに行こう…。
制服のポケットにあるのは定期券と、小さな財布…。
財布には二千円くらいしか入っていない。
…急に飛び出して来たのだから当然だ。
…どこに…
…誰に…
紫織の胸に浮かぶのは、ただひとりだ。
たったひとりだけだ。
激しく降り注ぐ雨に、駅に着くまで髪も制服も濡れてしまったので他の乗客から離れて、ドア前に佇む。
…窓の外はすっかり暮れて、墨を流したような夜の景色だ。
トランプのカードを切るように過ぎてゆく家々には、暖かな灯りが灯っている。
…けれど、今の紫織には、帰る場所がどこにもない…。
父は仕事でデュッセルドルフだ。
父方の祖父母は紫織をとても可愛がってくれるが、札幌に住んでいる。
高校生が簡単に会いに行ける距離ではない。
…どこに行こう…。
制服のポケットにあるのは定期券と、小さな財布…。
財布には二千円くらいしか入っていない。
…急に飛び出して来たのだから当然だ。
…どこに…
…誰に…
紫織の胸に浮かぶのは、ただひとりだ。
たったひとりだけだ。