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第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜

帰宅の途に着く人々で溢れた池袋で乗り換え、慣れない西武池袋線に乗る。
江古田駅で降りた時には、既に夜の七時を回っていた。
帰宅ラッシュの人波に身を任せ、改札口を出る。
相変わらず、大粒の雨が間断なく降り続いていた。

…ここから、すぐらしいけれど…。

頭の中で藤木の自宅の住所を諳んじる。

…藤木の住所を知ったのは偶然だ。

生徒会の副会長をしている紫織は、学院のシスターや教職員たちに送るサマーカードの作成の役目を担っていた。
それで、教職員名簿を手にしたのだ。

藤木の住所は一番に探した。
最初に会ったときに言っていた通り、江古田駅近くのアパート住まいのようであった。
住所と電話番号はメモすることなく直ぐに暗記できた。
頭の中でそれらが擦り切れるまで、何度も何度も繰り返したからだ。

そうして、今も紫織は藤木の住所を唱える。
唱えながら歩き出す。

…彼のもとに、向かうために…。