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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…あった…。ここだわ…」
そこはアパート…というよりはこじんまりとした三階建ての小綺麗なマンションであった。
いわゆるファミリータイプではなく、独身者向けの賃貸マンションのようだ。

入り口のエントランスに打ち付けられた銀色のプレート…『メゾン・オークス』…
藤木の自宅の住所名と同じなのを確認して紫織は漸く安堵する。

…けれど、入り口は最近よく見かけるオートロック式のエントランスに守られている。
中に入ることは出来ない。

暫く躊躇した挙句、紫織はおずおずと藤木の部屋番号のボタンを押す。
…軽やかにチャイムの電子音が鳴るが、中からの応答はない。

…まだ帰ってないのかな…。
珍しく改まったスーツ姿だったし、用事があるように見えた…。

紫織は小さくため息を吐き、けれど帰る気にはなれずに、そのまま雨を避け、辛うじてある庇の下に佇んだ。
それでもかなりの雨粒が当たるが、外よりはまだましだ。

…まるで捨て犬か捨て猫みたいだわ…。
自虐的に微かに笑い、紫織は夜空を見上げる。

銀色の雨が、まるでこの世の終わりまで降り続くかのように激しく音を立てて降り注いでいた…。


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