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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…これを持って、シャワーを使いなさい。
…それから、必ず浴室に鍵を掛けてね…」
ふかふかのバスタオルと、藤木のものらしい洗いざらしのグレーのトレーナー、紺色のナイキのジャージを紫織に渡すと、藤木はさっさと奥のキッチンに消えた。
「…シャワー…別にいいです…」
小さな声で呟くと…
「風邪をひくから、ちゃんと温まりなさい」
キッチンから有無を言わさぬ言葉が返ってきた。
「…はい…」
紫織は素直に頷き、浴室に入った。
…鍵…掛けなくてもいいのにな…。
ふと考えて、そんな自分が恥ずかしくなる。
こじんまりしたバスルームは、必要最小限のものしかなかったが、どこもかしこも清潔だった。
良い薫りがするのは、恐らくは藤木が配合したアロマオイルなどが置かれているのだろう。
脱衣室の鏡に、紫織が映っている。
泣き腫らした眼は真っ赤で、鼻先も頰も紅く染まっている。
…恥ずかしいな…。不細工な貌、先生に見せちゃった…。
けれど、気持ちは少し落ち着いていた。
さっきまでの爆発しそうな悲しみや寂しさは、僅かだが凪いでいた。
藤木の温かな胸の温もりが、そっと吸い取ってくれたのだ…。
紫織は鏡の中の自分に、小さな声で囁く。
「…先生…大好き…」
…恋い焦がれる男の浴室にいることが、奇跡のように感じる。
甘く、狂おしく、苦しい感傷が、紫織の胸に溢れる。
紫織は濡れそぼったセーラー服をゆっくりと脱いだ。
…それから、必ず浴室に鍵を掛けてね…」
ふかふかのバスタオルと、藤木のものらしい洗いざらしのグレーのトレーナー、紺色のナイキのジャージを紫織に渡すと、藤木はさっさと奥のキッチンに消えた。
「…シャワー…別にいいです…」
小さな声で呟くと…
「風邪をひくから、ちゃんと温まりなさい」
キッチンから有無を言わさぬ言葉が返ってきた。
「…はい…」
紫織は素直に頷き、浴室に入った。
…鍵…掛けなくてもいいのにな…。
ふと考えて、そんな自分が恥ずかしくなる。
こじんまりしたバスルームは、必要最小限のものしかなかったが、どこもかしこも清潔だった。
良い薫りがするのは、恐らくは藤木が配合したアロマオイルなどが置かれているのだろう。
脱衣室の鏡に、紫織が映っている。
泣き腫らした眼は真っ赤で、鼻先も頰も紅く染まっている。
…恥ずかしいな…。不細工な貌、先生に見せちゃった…。
けれど、気持ちは少し落ち着いていた。
さっきまでの爆発しそうな悲しみや寂しさは、僅かだが凪いでいた。
藤木の温かな胸の温もりが、そっと吸い取ってくれたのだ…。
紫織は鏡の中の自分に、小さな声で囁く。
「…先生…大好き…」
…恋い焦がれる男の浴室にいることが、奇跡のように感じる。
甘く、狂おしく、苦しい感傷が、紫織の胸に溢れる。
紫織は濡れそぼったセーラー服をゆっくりと脱いだ。