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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
紫織が髪を拭きながらバスルームを出ると、すぐに藤木が現れた。
「よく温まった?」
いつもと変わらない穏やかな微笑みに緊張が解ける。
「…はい…」
藤木が貸してくれたトレーナーはぶかぶかで袖を捲らなくては指先も出ない。
ジャージのパンツもそうだ。
ウエストは紐で調整して、裾はくるくるとロールアップした。
脚は素足だ。
紺のハイソックスは濡れてしまっていたから脱いだ。
…なんだかひどく恥ずかしくて、まともに藤木を見られない。
「制服、貸して」
唐突に言い出され、眼を見張る。
「…え?」
「浴室に乾燥機が付いている。
帰るまでには、乾くだろう」
そう言って、紫織のセーラー服をハンガーに掛け、バスルームに入っていった。
…紫織は遠慮勝ちにリビングらしき部屋に入る。
フローリングの床に直置きのテレビ、少し大きめの円形のローテーブル、セピア色のクッションが二つ…。
きちんと片付いている清潔な部屋に、家具はそれだけだった。
「…まだ、髪が濡れているよ…」
音もなく戻ってきた藤木に、背後からそっと髪に触れられる。
紫織は思わずびくりと身体を震わせた。
小さな温かな微笑みが漏れる気配がする。
「…そこに座って…」
手を引かれ、クッションに座らされた。
藤木がバスタオルを受け取り、紫織の髪を丹念に拭き始めた。
「よく拭かないと風邪をひく…」
向かい合わせ、吐息と体温…それからモッシーとシプレーの薫り…それらが近く、濃く、男の存在を感じさせる。
藤木に抱きしめられた生々しい記憶と温もりが甦り、紫織は思わず眼を閉じた。
藤木は変わらずに、紫織の髪を拭き続けた。
…ややもあって、低く心地よい…何より優しい声が届いた。
「…何があったの…?」
「よく温まった?」
いつもと変わらない穏やかな微笑みに緊張が解ける。
「…はい…」
藤木が貸してくれたトレーナーはぶかぶかで袖を捲らなくては指先も出ない。
ジャージのパンツもそうだ。
ウエストは紐で調整して、裾はくるくるとロールアップした。
脚は素足だ。
紺のハイソックスは濡れてしまっていたから脱いだ。
…なんだかひどく恥ずかしくて、まともに藤木を見られない。
「制服、貸して」
唐突に言い出され、眼を見張る。
「…え?」
「浴室に乾燥機が付いている。
帰るまでには、乾くだろう」
そう言って、紫織のセーラー服をハンガーに掛け、バスルームに入っていった。
…紫織は遠慮勝ちにリビングらしき部屋に入る。
フローリングの床に直置きのテレビ、少し大きめの円形のローテーブル、セピア色のクッションが二つ…。
きちんと片付いている清潔な部屋に、家具はそれだけだった。
「…まだ、髪が濡れているよ…」
音もなく戻ってきた藤木に、背後からそっと髪に触れられる。
紫織は思わずびくりと身体を震わせた。
小さな温かな微笑みが漏れる気配がする。
「…そこに座って…」
手を引かれ、クッションに座らされた。
藤木がバスタオルを受け取り、紫織の髪を丹念に拭き始めた。
「よく拭かないと風邪をひく…」
向かい合わせ、吐息と体温…それからモッシーとシプレーの薫り…それらが近く、濃く、男の存在を感じさせる。
藤木に抱きしめられた生々しい記憶と温もりが甦り、紫織は思わず眼を閉じた。
藤木は変わらずに、紫織の髪を拭き続けた。
…ややもあって、低く心地よい…何より優しい声が届いた。
「…何があったの…?」