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異邦人の庭 〜secret garden〜
第2章 ブルームーンの秘密
この年の五月のお茶会は、なぜか紗耶が徳子の隣に座るよう促された。
隣の席は、食事のマナーや所作はもちろんのこと、徳子と交わす会話にも神経を使わなくてはならない。
緊張していると、向かい側の席に座る千晴が「頑張って」と言うように温かな目配せを送ってきた。
…その眼差しだけで紗耶は気持ちが落ち着き、強くなれる気がした。
紗耶は深呼吸をひとつすると、優雅な所作でダージリンを口に運ぶ徳子にそっと話しかけた。
「…あの…。大お祖母様。
よろしければひとつご相談しても良いですか?」
「何ですか?紗耶さん」
徳子は家臣を睥睨するように紗耶に視線を移す。
「…私の部屋の窓辺に…蔓薔薇を誘引していいと両親に許可を貰ったので、蔓薔薇を植えたいのです。
けれど何が良いか迷ってしまって…。
もしよろしければ、大お祖母様のお勧めをご教授いただいても良いでしょうか?」
これは、本当にずっと迷っていたことだった。
紗耶の家には庭師はいないし、政彦はガーデニングには興味はない。
紫織はハーブと草花には詳しいが蔓薔薇に関しては紗耶と同じくらいの知識だった。
そこで…
『大お祖母様にお聞きしてみてはどうかしら?
大お祖母様はかつて大お祖父様とスコットランドのマナーハウスで暮らされた時に薔薇の見事なお庭を自ら作られたそうよ。
きっとアドバイスをくださることと思うわ』
と、紫織が勧めてくれたのだ。
徳子は蔓薔薇と聞いて、興味深そうに眼を見開いた。
高価そうなエメラルドのイヤリングが快活に揺れる。
「まあ、それはいいことね。
部屋の窓から薔薇の後ろ姿が見える光景は本当に素敵ですからね。
…そうね。貴女のお部屋の窓は日当たりは良いかしら?」
「はい。南向きで、日当たりは良いです。
…でも出窓が少し小さいんです。
だから、どんな薔薇が良いか迷ってしまって…」
隣の席は、食事のマナーや所作はもちろんのこと、徳子と交わす会話にも神経を使わなくてはならない。
緊張していると、向かい側の席に座る千晴が「頑張って」と言うように温かな目配せを送ってきた。
…その眼差しだけで紗耶は気持ちが落ち着き、強くなれる気がした。
紗耶は深呼吸をひとつすると、優雅な所作でダージリンを口に運ぶ徳子にそっと話しかけた。
「…あの…。大お祖母様。
よろしければひとつご相談しても良いですか?」
「何ですか?紗耶さん」
徳子は家臣を睥睨するように紗耶に視線を移す。
「…私の部屋の窓辺に…蔓薔薇を誘引していいと両親に許可を貰ったので、蔓薔薇を植えたいのです。
けれど何が良いか迷ってしまって…。
もしよろしければ、大お祖母様のお勧めをご教授いただいても良いでしょうか?」
これは、本当にずっと迷っていたことだった。
紗耶の家には庭師はいないし、政彦はガーデニングには興味はない。
紫織はハーブと草花には詳しいが蔓薔薇に関しては紗耶と同じくらいの知識だった。
そこで…
『大お祖母様にお聞きしてみてはどうかしら?
大お祖母様はかつて大お祖父様とスコットランドのマナーハウスで暮らされた時に薔薇の見事なお庭を自ら作られたそうよ。
きっとアドバイスをくださることと思うわ』
と、紫織が勧めてくれたのだ。
徳子は蔓薔薇と聞いて、興味深そうに眼を見開いた。
高価そうなエメラルドのイヤリングが快活に揺れる。
「まあ、それはいいことね。
部屋の窓から薔薇の後ろ姿が見える光景は本当に素敵ですからね。
…そうね。貴女のお部屋の窓は日当たりは良いかしら?」
「はい。南向きで、日当たりは良いです。
…でも出窓が少し小さいんです。
だから、どんな薔薇が良いか迷ってしまって…」