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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
紫織はゆっくりと瞼を開いた。
けれど暫く、何も答えられずにいた。
藤木はそんな紫織を静かに見守っていた。
「…話したくなければ、話さなくていいよ…」
紫織は首を振る。
…やがて、紫織の形の良い唇が小さく開かれた。
「…私は…母にとって災いだったんです…」
藤木の端正な眉が顰められる。
「…え?」
「…私が生まれなければ、父と離婚できて、新しい人生を生きられた…て…。
それから…私のことを愛おしいと思えない…て…。
父を思い出すから…憎らしくなる…て…」
ぽたぽたと溢れ落ちた涙が、トレーナーに濃い染みを付ける。
「…私…母に愛されてはいないと、なんとなく勘付いていました。
ほかのお母様みたいに自然に笑いかけてくれたり、手を繋いでくれたり、抱きしめてくれたり、全然してくれないし…。
でも、それは、愛情表現が苦手なんだと思っていました。
父とは不仲だけれど…私には母親としての愛情を少しは持っていると信じていました…。
…でも…そうじゃなかった…。
…私は…愛されていなかった…。
むしろ、憎まれていた…。
…私は…お母様の人生の汚点なんだわ…!」
堪らずにしゃくり上げる紫織を、藤木の腕が力強く引き寄せた。
…温かな頼もしい広い胸…
再び、抱きしめられたのだと、紫織は涙を流しながらぼんやりと察する。
「…君が汚点なんかであるはずがない。
こんなに綺麗で可愛らしい娘がいて、何が汚点なんだ。
腹立たしいよ…。
君が災い?ありえない。
そんなことを気にしては駄目だ。
君の人生の中で、君のお母様はほんの一部に過ぎないんだ。
そのことに囚われてはいけない」
静かだが、激しく熱い言葉だった。
「…先生…」
見上げる瞳に、藤木の榛色の瞳が映る。
…美しい榛色の瞳…
そこには慈愛があり…そして仄かな熱情の光が宿っていた…。
それは、ずっとずっと紫織が見たくて堪らなかった男の情熱の色彩だったのだ。
「…先生…」
「うん?」
涙で滲む藤木の貌を、瞬きもせずに見つめる。
…その言葉は、自然に唇から溢れ出た…。
「…好きです…。先生…」
けれど暫く、何も答えられずにいた。
藤木はそんな紫織を静かに見守っていた。
「…話したくなければ、話さなくていいよ…」
紫織は首を振る。
…やがて、紫織の形の良い唇が小さく開かれた。
「…私は…母にとって災いだったんです…」
藤木の端正な眉が顰められる。
「…え?」
「…私が生まれなければ、父と離婚できて、新しい人生を生きられた…て…。
それから…私のことを愛おしいと思えない…て…。
父を思い出すから…憎らしくなる…て…」
ぽたぽたと溢れ落ちた涙が、トレーナーに濃い染みを付ける。
「…私…母に愛されてはいないと、なんとなく勘付いていました。
ほかのお母様みたいに自然に笑いかけてくれたり、手を繋いでくれたり、抱きしめてくれたり、全然してくれないし…。
でも、それは、愛情表現が苦手なんだと思っていました。
父とは不仲だけれど…私には母親としての愛情を少しは持っていると信じていました…。
…でも…そうじゃなかった…。
…私は…愛されていなかった…。
むしろ、憎まれていた…。
…私は…お母様の人生の汚点なんだわ…!」
堪らずにしゃくり上げる紫織を、藤木の腕が力強く引き寄せた。
…温かな頼もしい広い胸…
再び、抱きしめられたのだと、紫織は涙を流しながらぼんやりと察する。
「…君が汚点なんかであるはずがない。
こんなに綺麗で可愛らしい娘がいて、何が汚点なんだ。
腹立たしいよ…。
君が災い?ありえない。
そんなことを気にしては駄目だ。
君の人生の中で、君のお母様はほんの一部に過ぎないんだ。
そのことに囚われてはいけない」
静かだが、激しく熱い言葉だった。
「…先生…」
見上げる瞳に、藤木の榛色の瞳が映る。
…美しい榛色の瞳…
そこには慈愛があり…そして仄かな熱情の光が宿っていた…。
それは、ずっとずっと紫織が見たくて堪らなかった男の情熱の色彩だったのだ。
「…先生…」
「うん?」
涙で滲む藤木の貌を、瞬きもせずに見つめる。
…その言葉は、自然に唇から溢れ出た…。
「…好きです…。先生…」