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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
藤木の榛色の瞳が大きく見開かれる。
「…好き…大好きです…」
男の腕を掴みかけた刹那…不意に抱擁が解かれた。

「…やめなさい…」
苦しげに横を向かれた。
「…軽はずみに、そんなことを言ってはいけない」
「どうして?軽はずみって何?
私、先生が好きです。
先生だって気づいていたはずだわ。
私が先生を好きで好きでたまらないことを…。
でなければ私は毎日、先生にお弁当を作ったりしないわ。
放課後のお茶の時間だって、どれだけ私が楽しみにしていたか…。
先生が気づかないはずはないわ」
…全部、全部分かっていたはずだ。
分からないのは…
藤木の気持ちだけだ。

切なげに、藤木が首を振る。
「君は勘違いしているんだよ。
年上の教師への憧れめいた気持ちを恋愛感情だと…。
君みたいに美しい少女なら、もっと相応しい恋愛相手がいるはずだ」
「やめて…!そんなことを聞きたいんじゃないわ。
私は…先生の本当の気持ちを聞きたいの。
先生は私のことが好き?」
「…もちろん好きだよ…」
苦しげに答える藤木に紫織は詰め寄る。
「生徒としてじゃなくて、一人の女の子として好き?」
「北川さん…」
「ちゃんと答えて」
紫織の必死な…けれど、ぞくりとするような匂い立つような艶を秘めた瞳から、藤木は切なげに視線を逸らす。

「…答えられないよ…。
僕は…教師だ。
例え君が好きでも、そう答えるわけにはいかない」

紫織は激しく首を振った。
「いや…!答えて…!
…私が好きだって…」
「北川さん…」
ゆっくりと瞬きしながら、紫織は藤木の首すじに両手を回す。

「…好きだ…て、言って…」
大胆な仕草とは真逆に、一途に懇願する。
…そして…
ひたむきに…けれど甘く、誘うように、囁く…。

「…私が好きなら…キスして…」




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