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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…ごめんね…。僕が無神経だった…」
紫織は首を振る。
…そんなこと、ない。
私が幼くて、未熟なだけなのだ…。
未熟で、心が狭くて、みっともない私…。
…こんな私は、藤木先生に愛される資格があるのだろうか…。
「…私がわがままなの…。
先生が私以外のひとに話しかけたり、笑いかけたりするのも嫌なの。
先生を独り占めしたいの。
…そんなこと無理なの、分かっているのに…」
…ごめんなさい…。
紫織は貌を伏せたまま謝る。
「…紫織…。僕を見て…」
優しい声ののち、藤木の指が紫織の顎にかかり、持ち上げられる。
…綺麗な…榛色の瞳…。
こんなに美しい瞳を、見たことがないと紫織は思う。
「…僕だってそうだよ。
君を独占したい。
…ここは女子校だから、心配は少ないけれど、一歩外に出たら君みたいに奇跡のように綺麗な女の子に夢中になってしまう男はたくさんいるだろう。
…この間のバスの学生みたいにね…。
心配で心配で仕方ないよ…」
「…先生…」
ゆらゆらと潤む瞳の中に、藤木の困ったような笑顔が映る。
…近づいて、あっという間もなく、紫織の唇が柔らかく奪われた。
「…先…生…」
甘い吐息を漏らす紫織を強く抱きしめる。
「…学校で…しかも聖なる礼拝堂で…とんでもない教師だな…」
「…そうね…」
幸せそうに微笑んで、引き締まった藤木の背中を抱きしめ返す。
「…バチが当たるかな…」
…祭壇の背後、ベネチアンガラスの聖母子像に西陽が当たり、幻想的な光が射し込む。
「…先生と一緒なら、構わないわ…」
「…紫織…」
桜色に染まった白い頰をそっと撫でられる。
「…君にバチは当てないよ。
僕がすべての責任を持つ…。
君を不幸には、絶対にしない…。
…どんなことがあっても…」
…嬉しい言葉の筈なのに、なぜか不意に哀しい予感が胸を過ぎる。
紫織は思わず、藤木にしがみつく。
「…いや…そんなこと、言わないで…」
宥めるように、藤木がぽんぽんと紫織の背中を優しく叩く。
「…大丈夫だよ…。紫織は何も心配しなくていい…」
…それよりも…
紫織を覗き込む榛色の瞳が、慈しみの色で明るく微笑む。
「…来週の土曜日、何か予定ある?」
「…え?」
「二人で、海に行かない?」
…はにかんだその貌は少年のようだった…。
紫織は首を振る。
…そんなこと、ない。
私が幼くて、未熟なだけなのだ…。
未熟で、心が狭くて、みっともない私…。
…こんな私は、藤木先生に愛される資格があるのだろうか…。
「…私がわがままなの…。
先生が私以外のひとに話しかけたり、笑いかけたりするのも嫌なの。
先生を独り占めしたいの。
…そんなこと無理なの、分かっているのに…」
…ごめんなさい…。
紫織は貌を伏せたまま謝る。
「…紫織…。僕を見て…」
優しい声ののち、藤木の指が紫織の顎にかかり、持ち上げられる。
…綺麗な…榛色の瞳…。
こんなに美しい瞳を、見たことがないと紫織は思う。
「…僕だってそうだよ。
君を独占したい。
…ここは女子校だから、心配は少ないけれど、一歩外に出たら君みたいに奇跡のように綺麗な女の子に夢中になってしまう男はたくさんいるだろう。
…この間のバスの学生みたいにね…。
心配で心配で仕方ないよ…」
「…先生…」
ゆらゆらと潤む瞳の中に、藤木の困ったような笑顔が映る。
…近づいて、あっという間もなく、紫織の唇が柔らかく奪われた。
「…先…生…」
甘い吐息を漏らす紫織を強く抱きしめる。
「…学校で…しかも聖なる礼拝堂で…とんでもない教師だな…」
「…そうね…」
幸せそうに微笑んで、引き締まった藤木の背中を抱きしめ返す。
「…バチが当たるかな…」
…祭壇の背後、ベネチアンガラスの聖母子像に西陽が当たり、幻想的な光が射し込む。
「…先生と一緒なら、構わないわ…」
「…紫織…」
桜色に染まった白い頰をそっと撫でられる。
「…君にバチは当てないよ。
僕がすべての責任を持つ…。
君を不幸には、絶対にしない…。
…どんなことがあっても…」
…嬉しい言葉の筈なのに、なぜか不意に哀しい予感が胸を過ぎる。
紫織は思わず、藤木にしがみつく。
「…いや…そんなこと、言わないで…」
宥めるように、藤木がぽんぽんと紫織の背中を優しく叩く。
「…大丈夫だよ…。紫織は何も心配しなくていい…」
…それよりも…
紫織を覗き込む榛色の瞳が、慈しみの色で明るく微笑む。
「…来週の土曜日、何か予定ある?」
「…え?」
「二人で、海に行かない?」
…はにかんだその貌は少年のようだった…。