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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…そんなに見ないでください…恥ずかしい…」
助手席に座り紫織は俯いて、小さな声で抗議した。
…土曜日の早朝、紫織の自宅から少し離れた緑地公園の傍らに停めた車の中…。
藤木が運転席から穏やかに微笑んだ。
「…紫織が可愛すぎて驚いてる。
私服は初めて見るね…」
「…そう…ね…」
…昨夜は夜遅くまで、着て行く服で悩みまくっていた。
クローゼットから取っ替え引っ替え服を出しては胸に当て、これじゃないとその繰り返しだった。
…結局、シースルーのフレア袖の真珠色のワンピースにミュールサンダルにした。
髪は下ろして、毛先をカールさせてみた。
…学校では地味なハーフアップだから、少し大人っぽく見せたかったのだ。
香水は父にプレゼントされたキャシャレルのアナイスアナイス。
…少しだけ、メイクもしてみた。
シャネルの桜色の口紅に、アイシャドウはディオールのベージュピンク…。
…すべて父からの海外土産だ。
父は紫織に華やかなものや綺麗なものを買い与えるのが趣味なのだ。
こんなときは買い物道楽の父に密かに感謝する。
「…すごく綺麗で可愛い」
端正な榛色の眼差しで見つめられ、体温が上がる。
「…先生…」
藤木も今日はカジュアルなデザインながらきちんとした仕立ての良い麻のジャケットを羽織っている。
下はアイボリーのVネックのニットにチノパンツ…。
ちゃんとデート仕様にしてくれている服装に嬉しくなる。
…髪もワックスでスタイリングされていて、学校にいる時の藤木と雰囲気が異なる。
藤木ののどかな寝癖あとが好きな紫織は少し残念に思ったりする…。
「先生もすごく素敵…。
…いつもの先生じゃないみたい…」
小さく答えると、藤木が紫織の頰を軽く抓った。
「ありがとう。先生はなけなしのセンスを捻り出して頑張りました」
戯けた言い方が可笑しくてくすくす笑う。
優しい横貌を見せながら、藤木は車のエンジンを掛けた。
「お天気で、よかったよ」
眩しい夏の日差しが車内に満ち溢れ、紫織の心は更に浮き立つ。
「ねえ、海ってどこの海に行くの?」
湘南かな?それとも伊豆かしら?
車が滑らかにスタートした。
藤木が綺麗なハンドルさばきを見せながら、微笑み交じりに答えた。
「房総の小さな海の町だ。
…人が少ないし…それに…」
しみじみしたように呟いた。
「…昔、少し住んでいた町なんだ…」
助手席に座り紫織は俯いて、小さな声で抗議した。
…土曜日の早朝、紫織の自宅から少し離れた緑地公園の傍らに停めた車の中…。
藤木が運転席から穏やかに微笑んだ。
「…紫織が可愛すぎて驚いてる。
私服は初めて見るね…」
「…そう…ね…」
…昨夜は夜遅くまで、着て行く服で悩みまくっていた。
クローゼットから取っ替え引っ替え服を出しては胸に当て、これじゃないとその繰り返しだった。
…結局、シースルーのフレア袖の真珠色のワンピースにミュールサンダルにした。
髪は下ろして、毛先をカールさせてみた。
…学校では地味なハーフアップだから、少し大人っぽく見せたかったのだ。
香水は父にプレゼントされたキャシャレルのアナイスアナイス。
…少しだけ、メイクもしてみた。
シャネルの桜色の口紅に、アイシャドウはディオールのベージュピンク…。
…すべて父からの海外土産だ。
父は紫織に華やかなものや綺麗なものを買い与えるのが趣味なのだ。
こんなときは買い物道楽の父に密かに感謝する。
「…すごく綺麗で可愛い」
端正な榛色の眼差しで見つめられ、体温が上がる。
「…先生…」
藤木も今日はカジュアルなデザインながらきちんとした仕立ての良い麻のジャケットを羽織っている。
下はアイボリーのVネックのニットにチノパンツ…。
ちゃんとデート仕様にしてくれている服装に嬉しくなる。
…髪もワックスでスタイリングされていて、学校にいる時の藤木と雰囲気が異なる。
藤木ののどかな寝癖あとが好きな紫織は少し残念に思ったりする…。
「先生もすごく素敵…。
…いつもの先生じゃないみたい…」
小さく答えると、藤木が紫織の頰を軽く抓った。
「ありがとう。先生はなけなしのセンスを捻り出して頑張りました」
戯けた言い方が可笑しくてくすくす笑う。
優しい横貌を見せながら、藤木は車のエンジンを掛けた。
「お天気で、よかったよ」
眩しい夏の日差しが車内に満ち溢れ、紫織の心は更に浮き立つ。
「ねえ、海ってどこの海に行くの?」
湘南かな?それとも伊豆かしら?
車が滑らかにスタートした。
藤木が綺麗なハンドルさばきを見せながら、微笑み交じりに答えた。
「房総の小さな海の町だ。
…人が少ないし…それに…」
しみじみしたように呟いた。
「…昔、少し住んでいた町なんだ…」