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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「房総?
…先生は長野ご出身じゃなかったの?」
少し驚いて尋ねる。
「うん。小さな頃にね。
…小学校に上がるまでかな…。
だからもう二十年以上帰ってないんだけれど…。
…すっかり変わっているかな…」
フロントガラス越しの初夏の陽射しが眩しいのか、サングラスを掛けハンドルを握る藤木は、紫織の見知らぬ横貌を持つ…。
その端正な横貌を見ながら、ふと思う。
…私って、藤木先生のことをまだ何も知らないんだわ…。
微かな寂しさが胸を過ぎる。
「…先生…」
「うん?」
優しく視線を送ってくれる男に、愛を込めて告げる。
「…大好きよ…」
…大好き。
泣きたくなるほどに、大好き。
…きっともう、一生、この人以上に好きになれるひとは現れないだろう…。
切ない予感に苦しくなるほどだ。
藤木から温かな吐息のような微笑みが漏れ…紫織の白い頰に素早く、慈しみのキスが贈られた。
「美人に見惚れて前方不注意だ。
気をつけなきゃ」
大きな片手で愛おしげに紫織の髪を撫で、男は朗らかに笑った。
…先生は長野ご出身じゃなかったの?」
少し驚いて尋ねる。
「うん。小さな頃にね。
…小学校に上がるまでかな…。
だからもう二十年以上帰ってないんだけれど…。
…すっかり変わっているかな…」
フロントガラス越しの初夏の陽射しが眩しいのか、サングラスを掛けハンドルを握る藤木は、紫織の見知らぬ横貌を持つ…。
その端正な横貌を見ながら、ふと思う。
…私って、藤木先生のことをまだ何も知らないんだわ…。
微かな寂しさが胸を過ぎる。
「…先生…」
「うん?」
優しく視線を送ってくれる男に、愛を込めて告げる。
「…大好きよ…」
…大好き。
泣きたくなるほどに、大好き。
…きっともう、一生、この人以上に好きになれるひとは現れないだろう…。
切ない予感に苦しくなるほどだ。
藤木から温かな吐息のような微笑みが漏れ…紫織の白い頰に素早く、慈しみのキスが贈られた。
「美人に見惚れて前方不注意だ。
気をつけなきゃ」
大きな片手で愛おしげに紫織の髪を撫で、男は朗らかに笑った。