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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…わあ…!
海だわ…!」
海沿いの海岸道路に車が停まる。
眼の前にはまるでプライベートビーチのようなひと気のない静かな海の景色が広がる。
紫織は待ちきれずにすぐさまドアを開け、歓声を上げながら外に出た。
短い階段を駆け下り、白い砂浜に脚を取られながら、波打ち際に走る。

…温かな潮風に、海の匂いがしっとりと混ざる。
美しい紺碧の海…。
きらきら輝く水平線には、小さな漁船がのどかに浮かんでいる。
…打ち寄せる波は、内房らしくとても穏やかだ。

「…綺麗な海…!」
うっとりと見惚れる。
紫織の長い髪が、潮風にさらりと靡く。

「海は久しぶり?」
ゆっくりと追いついた藤木に声をかけられる。
「ええ。…何年か前に父とハワイに行って以来…。
父は私が日焼けするのを嫌がるんです。
だからバカンスではあまり行かなくて…。
…私は海が大好きなのに…」

藤木がサングラスを外しながら、眩しげに紫織を見下ろす。
「…お父様に可愛がられているんだね…。
こんなに綺麗な娘さんがいたら、そんな気持ちも分かるけれどね…」
「…もう…」
柔らかく睨むと、背後から藤木に愛おしげに抱きしめられた。
…藤木のトワレに潮の香りが柔らかく混ざる。

「…僕も久しぶりだ…。
…ここの海は…少しも変わってないな…」
…懐かしい…と、囁いた。
しみじみした口調…。
微かに、哀調が帯びていた。

「…先生…」
「うん?」
胸の前に回された引き締まった腕を、紫織はぎゅっと握りしめる。
「…私、先生のことを知りたい…。
たくさんたくさん知りたい…」
「…紫織…」
その手が強く握り返された。

「…いいよ…。
紫織には知ってほしい。
…僕の…すべてを…」
見上げる先の榛色の瞳は、夏の海の色を映していた。
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