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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
白い砂浜に、並んで座る。
ミュールを脱ぎ捨て素足になる。
紫織の白く形の良い長い脚を、藤木が眩しげに見…すぐに眼を逸らした。
抜けるような青空の中、遠くに霞んで見えるのは三浦半島だと言う。
「あんなに近くに見えるのね…」
紫織は眼を丸くした。
「…金谷港からフェリーで45分さ。
あっと言う間に横須賀に着く。
…あの頃はそれが不思議だったなあ…。
フェリーが外国船のような気がしていた。
…小さく見える半島を、外国だと思い込んでいた」
「…可愛い…」
藤木が小さく笑って、紫織の頭を引き寄せた。
「…僕はこの町で生まれた。
母はこの町の小さな町医者の娘でね。
母はそこで医師の父親の助手や受付をして医院を手伝っていた。
ある日のこと、夜釣りで怪我をした一人の男性が運ばれて来て母が怪我の手当てをした。
二人はそのまま恋に落ちる…。
そうして、僕が生まれた…。
…なかなかロマンチックなラブストーリーだろう?」
藤木の微笑みにつられて、紫織も思わず笑みを漏らした。
「ええ。素敵ね…」
藤木が遠くの水平線を見つめる。
「…けれど僕は最初、婚外子だったんだ」
「…え?」
一瞬意味が分からずに瞬きをした。
「…婚外子。
…つまり、母は未婚のまま僕を産んだんだ」
思わず息を飲む紫織を優しく振り返る。
「母に出会った当時、父は結婚していて子どももいたんだ。
…離婚調停中ではあったんだけれどね…」
「…そうだったの…」
ほかに掛ける言葉が見つからず、紫織はそっと藤木の手を握りしめた。
…その手はすぐに握り返された。
ミュールを脱ぎ捨て素足になる。
紫織の白く形の良い長い脚を、藤木が眩しげに見…すぐに眼を逸らした。
抜けるような青空の中、遠くに霞んで見えるのは三浦半島だと言う。
「あんなに近くに見えるのね…」
紫織は眼を丸くした。
「…金谷港からフェリーで45分さ。
あっと言う間に横須賀に着く。
…あの頃はそれが不思議だったなあ…。
フェリーが外国船のような気がしていた。
…小さく見える半島を、外国だと思い込んでいた」
「…可愛い…」
藤木が小さく笑って、紫織の頭を引き寄せた。
「…僕はこの町で生まれた。
母はこの町の小さな町医者の娘でね。
母はそこで医師の父親の助手や受付をして医院を手伝っていた。
ある日のこと、夜釣りで怪我をした一人の男性が運ばれて来て母が怪我の手当てをした。
二人はそのまま恋に落ちる…。
そうして、僕が生まれた…。
…なかなかロマンチックなラブストーリーだろう?」
藤木の微笑みにつられて、紫織も思わず笑みを漏らした。
「ええ。素敵ね…」
藤木が遠くの水平線を見つめる。
「…けれど僕は最初、婚外子だったんだ」
「…え?」
一瞬意味が分からずに瞬きをした。
「…婚外子。
…つまり、母は未婚のまま僕を産んだんだ」
思わず息を飲む紫織を優しく振り返る。
「母に出会った当時、父は結婚していて子どももいたんだ。
…離婚調停中ではあったんだけれどね…」
「…そうだったの…」
ほかに掛ける言葉が見つからず、紫織はそっと藤木の手を握りしめた。
…その手はすぐに握り返された。