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異邦人の庭 〜secret garden〜
第2章 ブルームーンの秘密
『うちの森野に言ってコーネリアの株を分けてお貰いなさい。
他にも欲しい蔓薔薇があったら遠慮なくおっしゃい。
森野に二宮の家で植え替えをするように伝えておきます』
去り際の徳子の言葉に、テーブルの一同は驚きの表情をした。
お気に入りの丹精込めた薔薇園の薔薇の株分けなど…ましてや屋敷の庭師を派遣することなど、徳子は今までしたことがなかったからだ。
親戚の大人たちは称賛の眼差しを紗耶に向け、紫織を褒め称えた。
華子が悔し紛れに
「ふん。紗耶ちゃんは大お祖母様のご機嫌取りがお上手ね。
おとなしい顔してしたたかだわ」
と耳元で囁き、紗耶の肩にわざとぶつかるようにして庭園を後にした。
…普段だったら酷く傷つく紗耶だっただろうが、この日は華子の皮肉や意地悪などさして気にならなかった。
…大お祖母様に褒めていただいた…。
大お祖母様の蔓薔薇も分けていただける…。
…そして何より…
千晴お兄ちゃまが喜んでくださった!
笑ってくださった…!
その嬉しさが、紗耶をいつまでも甘く柔らかな綿菓子のように包み込み続けたのだった。
他にも欲しい蔓薔薇があったら遠慮なくおっしゃい。
森野に二宮の家で植え替えをするように伝えておきます』
去り際の徳子の言葉に、テーブルの一同は驚きの表情をした。
お気に入りの丹精込めた薔薇園の薔薇の株分けなど…ましてや屋敷の庭師を派遣することなど、徳子は今までしたことがなかったからだ。
親戚の大人たちは称賛の眼差しを紗耶に向け、紫織を褒め称えた。
華子が悔し紛れに
「ふん。紗耶ちゃんは大お祖母様のご機嫌取りがお上手ね。
おとなしい顔してしたたかだわ」
と耳元で囁き、紗耶の肩にわざとぶつかるようにして庭園を後にした。
…普段だったら酷く傷つく紗耶だっただろうが、この日は華子の皮肉や意地悪などさして気にならなかった。
…大お祖母様に褒めていただいた…。
大お祖母様の蔓薔薇も分けていただける…。
…そして何より…
千晴お兄ちゃまが喜んでくださった!
笑ってくださった…!
その嬉しさが、紗耶をいつまでも甘く柔らかな綿菓子のように包み込み続けたのだった。