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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
食事を終え「紫陽花食堂」を出ると、藤木はしばらく海岸に沿って車を走らせた。
…潮風が紫織の髪を靡かせる。
波の音が心地よい。

綺麗な海はいくらでも観てきた。
オアフ島のエメラルドグリーンの海…世界遺産に登録されている世界の宝石と評されるグレートバリアリーフの海…沖縄の石垣島のサンゴ礁に囲まれた海…。
けれどそれらよりもずっと、藤木の故郷の海は、のどかで優しく…どの風景も美しく愛おしく紫織の胸を打つ…。

「ねえ、次はどこに行くの?」

車のカーステレオから流れる曲は、サザンオールスターズだ。
…海でサザン…藤木先生は意外にベタなんだな…と、思う。
けれど、そんなところも好きだと、紫織は思う。

「紫織にプレゼントしたいものがあるんだ」

男は優しく笑い、口遊む。

…きみのことを今も、忘れられない…

仄かにもの哀しいメロディは潮風に流され、遠い夏の空へと溶かされ、消えていった…。


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