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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
宿の温泉は小さいながらも源泉掛け流しで、海水に冷えた身体の芯から温まった。

着替えを持たない紫織に、宿の女将が親切に差し出してくれたのは、撫子柄の藍染の浴衣と藤色の三尺帯だ。

「これ、良かったら着てくださいな。
あたしの若い頃の浴衣やなんけど、全く着んうちにこ〜んなに肥えてもうてなあ。
お嬢さんみたいな別嬪さんに着てもらえたら浴衣も喜ぶと思うんよ」
自分のお腹をぽんと叩きながら明るく笑う女将に、紫織は素朴な…けれどとても繊細な優しさも受け取る。

「…ありがとうございます。
お言葉に甘えて、着させていただきます…」
紫織は浴衣を大切に押し頂き、深く頭を下げた。

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