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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
二人が泊まる部屋の手前、ガラス戸に面した廊下の隅で紫織は友人の美加への電話を終え、そっと携帯電話のボタンを押した。

『任して、紫織。なんも心配しなくていいから。
ママからうちに泊まるって紫織のお家に電話してもらう。
…ママなんかえらく張り切っちゃってさ。
『紫織ちゃん、すんごいドラマチックな恋をしてるのねえ。
新派みたい!…ああ、水谷八重子、良かったわあ…。
鄙びた海の町の民宿に…恋しい男と離れがたくて…かあ…て、うっとりため息ついてるよ。
オバサンてば、ほんと妄想が古くさいったら』
からからと豪快に笑い、そうして…

…だからさ…
と、安心させるように囁いた。

『変なことや悲しいこと考えないで、ダーリンとの時間を大切に過ごしてね』

「…ありがとう、美加。
本当に、本当にありがとう…』

紫織は美加と美加の母の温かな思いやりに感謝しつつ、涙ぐみながら、そう繰り返したのだ。
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