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異邦人の庭 〜secret garden〜
第2章 ブルームーンの秘密
「…そう…。紗耶の父親よ…。
大切なひとだわ…」
紫織が苦しげに千晴の腕を振り払う。
そのまま背を向けた紫織の足元に千晴が跪き、裾の長い白く美しいシフォンのスカートに愛おしげに頰を寄せる。
…まるで、古いお伽話の騎士が麗しい王妃に求愛するかのように…。
「…紫織さん…!
では僕を愛していると言ってください。
貴女のその言葉だけで僕はこれから貴女だけを思い、生きて行きます」
「…千晴さん…離してください…」
困惑して下を向いた紫織の視線を、千晴は執拗に捉えて離さない。
「…お願いです。愛していると…」
その端麗な横貌を毅然と上げ、熱っぽい眼差しで懇願する。
「…愛していると言ってください」
紫織の長く濃い睫毛が切なげに震える。
その形の良い薄紅色の唇を噛み締め、わざと邪険に千晴の手からスカートを引き離す。
「…さよなら。千晴さん。
もう二度と、こんなことはなさらないで」
別れを告げた掠れた声が…けれどどこか甘く艶めかしい…。
紫織は、マダム・ブランティエの芳醇な花弁とその薫りを撒き散らすように、アーチを駆け抜けて行った。
「紫織さん!待ってください!」
千晴の長駆の影が、素早く紫織を追いかける。
…そうして紗耶はブルームーンの花陰のもと、ひとりぼっちに残されたのだった…。
大切なひとだわ…」
紫織が苦しげに千晴の腕を振り払う。
そのまま背を向けた紫織の足元に千晴が跪き、裾の長い白く美しいシフォンのスカートに愛おしげに頰を寄せる。
…まるで、古いお伽話の騎士が麗しい王妃に求愛するかのように…。
「…紫織さん…!
では僕を愛していると言ってください。
貴女のその言葉だけで僕はこれから貴女だけを思い、生きて行きます」
「…千晴さん…離してください…」
困惑して下を向いた紫織の視線を、千晴は執拗に捉えて離さない。
「…お願いです。愛していると…」
その端麗な横貌を毅然と上げ、熱っぽい眼差しで懇願する。
「…愛していると言ってください」
紫織の長く濃い睫毛が切なげに震える。
その形の良い薄紅色の唇を噛み締め、わざと邪険に千晴の手からスカートを引き離す。
「…さよなら。千晴さん。
もう二度と、こんなことはなさらないで」
別れを告げた掠れた声が…けれどどこか甘く艶めかしい…。
紫織は、マダム・ブランティエの芳醇な花弁とその薫りを撒き散らすように、アーチを駆け抜けて行った。
「紫織さん!待ってください!」
千晴の長駆の影が、素早く紫織を追いかける。
…そうして紗耶はブルームーンの花陰のもと、ひとりぼっちに残されたのだった…。