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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
藤木に会えるのは週に一度だけだ。
あまりに頻繁だと蒔子に訝しがられる。

会える日は限られていた。
週三回通っている予備校の金曜日だ。
金曜日はいつも授業の後、居残り自習をしていたから、帰宅が遅くても訝しがられることはないと思ったのだ。

予備校はもちろんサボった。
成績優秀な紫織は週に一度授業をサボっても成績が落ちることもなかった。
他の日に、熱心に夜遅くまで勉強したからだ。
だから成績は未だに学年トップだ。

…この日も紫織は、藤木のマンションで勉強しながら彼の帰りを待っていた。
藤木は化学クラブの顧問を引き受けているから帰宅は遅い。
合鍵は密かにもらっていた。

キッチンではことことと茸とカリフラワーとベーコンのクリームシチューが煮えている。
パルミジャーノチーズを溶かし入れるのが味の決め手と、カヨさんに教わった自信作だ。

…「急に寒くなったから、シチューが美味しいよね」
テキストを置いて、うきうきと独りごちる。
駅前の美味しいパン屋さんでバタールとクロワッサンも買った。
アボカドとトマトとブラックオリーブのサラダは冷蔵庫だ。

…結婚…したらこんな風なのかな…。
藤木の帰りを待ちながら、食事を用意したり、アイロンをかけたり…。
幸せな妄想がふわふわと湧き出てくる。

ふと、壁に貼られたカレンダーを眺める。

…もう12月か…。

クリスマス…。
紫織は自然と笑顔になる。

『イブは一緒に過ごそう』
藤木が約束してくれたのだ。

『少し遠出をして、伊豆でお祝いをしよう。
伊豆まで行けば、知り合いには会わないだろうし…。
下田に大学時代の友人が最近始めたペンションがあるんだ。
口の硬い奴だから信頼できる。
…泊まれるかな?』
紫織はすぐに頷いた。
『泊まれるわ。泊まりたい。
下田にはまだ行ったことがないの。
絶対に行くわ』
藤木に抱きついた。
…深い深い森に咲く百合と、神秘的なモッシーの薫り…。
大好きな男の薫りを、胸いっぱいに吸い込んだ…。



…と、玄関のチャイムが鳴った。
紫織は仔犬のように廊下を駆け出す。

待ちきれないように鍵を開ける。
ドアを開くと眼の前には、思い描いていた愛おしい男が微笑みながら佇んでいた。

「ただいま、紫織」

子どものようにぎゅっと抱きついた。

「おかえりなさい。先生…!」





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