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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…んんっ…ああ…は…ん…っ…」

…甘く濡れた声が、紫織の口唇から漏れる…。

男の口づけは、いつも性急だった。
廊下の壁に身体を強く押し付けられ、濃密に口内を弄られた…。
藤木の口づけは大胆で荒々しいのに、その手は優しく壊れものを抱くように紫織の髪を撫で、頰を撫でる。

「…あ…せんせ…い…」
「…会いたかった…紫織…」
低音の耳触りのよい声が、愛撫するように紫織の鼓膜を撫でる。

「…私もよ…」
睫毛が触れ合う距離で見つめ合い、また濃厚に口づけを交わす。
紫織は自分から男のざらりとした舌を絡めることも覚えた。
紫織の薄い舌が男の舌先を舐め、口唇を窄めて丹念に吸う。

そうすると、藤木が苦しげに端正な眉を寄せ、紫織を抱き上げるのだ。
「…悪い子だ…。僕をすぐその気にさせて…」
切なげに見下ろす榛色の瞳を、紫織はうっとりと見つめる。

「…先生…。好きよ…」

藤木の頰に伸ばされた白い手に愛おしげにキスを落とすと、男は足早に寝室へと紫織を運び去るのだった。
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