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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
…お母様なら、こんな風に隠れたりはしないんだろうな…。

イングリッシュガーデンの奥、白亜の温室に面した麻の白いリネンの大きなテントやパラソルの下で、おそらくはたくさんの親戚の人々に囲まれているだろう美貌の母を想う。

母、紫織はその場に現れただけですべての人々の視線を釘付けにしてしまうような美しいひとだ。
そして紗耶は、その紫織の一人娘だというのに、少しも似てはいない。
色白なのだけは母譲りだが、こじんまりした地味な目鼻立ちや蚊蜻蛉のように細く小さな身体や…何より家族と家政婦以外には碌に口も聞けない内向的な性格は、紫織とは正反対なものであった。

…紫織は、まだ二十八歳だと言うのに、昨年自宅離れにアロマテラピーの教室を開設した。
若く美しく才能に溢れるアロマセラピストとして、雑誌に掲載されたこともある。

嫋やかで清しい優美な美貌、淑やかで気品溢れる所作、優しく丁寧な教授法、センス溢れる話術…それらに魅せられた若いO Lや主婦たち、果ては男性たちにも人気を博し、始めたばかりの教室は大盛況なのだ。

けれど紫織は、仕事をしているからと言って、決して家事や育児を手抜きしたりしない。
銀行家で多忙な夫を堅実に支え、人一倍手のかかる引っ込み思案な娘を優しくきめ細やかに育てている。
紗耶の幼稚園や学校の行事やPTA活動もまめに参加しているし、紗耶が行きたくないと愚図るピアノやヴァイオリンのお稽古ごとにはずっと付き添ってくれる。
教育熱心だが、決して教育ママではない。
紗耶の性格を熟知し尊重し、無理強いはしない。

『紗耶ちゃんのお母様は本当にご立派ね。
まだお若いのに完璧な良妻賢母でいらっしゃるわ。
その上、アロマのお教室も開かれるなんて…。
まさに才色兼備ね』
人々が口を揃えて褒めそやすのを、すべて理解したわけではないけれど、紗耶はぼんやりとその通りだな…と思っている。
だから、余計にいたたまれないのだ。

…わたしみたいなのが子どもで、お母様はかわいそうだな…とも…。

もっと可愛いくてあたまが良くて明るくて元気な子どもだったら、お母様は幸せだったんじゃないかな…とも…。


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