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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
…今日だって…本当は来たくなかった…。
紗耶はテディベアのアリスを抱きしめ、ため息を吐いた。
…お父様のご本家の大お祖母様のお祝いだから…て、仕方なくきたのに…。
穏やかで優しい父は、今日も接待ゴルフで欠席だ。
母だけが頼りだったのに、母は屋敷に着くとすぐさま彼女を慕う多くの親戚縁者に囲まれてしまった。
気を利かせたつもりの高遠の屋敷の家政婦に
「紗耶お嬢様。さあさあこちらに。
華子お嬢様や麗香お嬢様もこちらのお庭で集まっていらっしゃいますよ」
手を引かれ、子どもたちが集まる中庭に連れて行かれそうになったのだ。
気色ばんだ紗耶は、家政婦が眼を離した隙に逃げ出し、この薔薇園に駆け込んだのだった。
…華子に麗香は同年代の親戚の少女たちだが、二人とも恐ろしく意地が悪い。
大人が見ているところでは、年少の紗耶に優しく振る舞うが、子どもたちだけになると、その態度は豹変する。
大人しく無口な紗耶を揶揄い意地悪することを何より楽しみにしているような子どもたちであった。
…けれど、それを両親に訴えることはできなかった。
口下手なせいもあるが、大人の前では評判の良い子の彼女たちに意地悪をされると言っても誰も信じないだろうと思ったのだ。
…それに…。
華子や麗香は本家筋に近い家柄の娘たちだ。
分家の…かなり末流の自分がそのようなことを言いだしてはならないような微妙な空気を、紗耶は六歳にして感じ取っていたのだ。
紗耶はテディベアのアリスを抱きしめ、ため息を吐いた。
…お父様のご本家の大お祖母様のお祝いだから…て、仕方なくきたのに…。
穏やかで優しい父は、今日も接待ゴルフで欠席だ。
母だけが頼りだったのに、母は屋敷に着くとすぐさま彼女を慕う多くの親戚縁者に囲まれてしまった。
気を利かせたつもりの高遠の屋敷の家政婦に
「紗耶お嬢様。さあさあこちらに。
華子お嬢様や麗香お嬢様もこちらのお庭で集まっていらっしゃいますよ」
手を引かれ、子どもたちが集まる中庭に連れて行かれそうになったのだ。
気色ばんだ紗耶は、家政婦が眼を離した隙に逃げ出し、この薔薇園に駆け込んだのだった。
…華子に麗香は同年代の親戚の少女たちだが、二人とも恐ろしく意地が悪い。
大人が見ているところでは、年少の紗耶に優しく振る舞うが、子どもたちだけになると、その態度は豹変する。
大人しく無口な紗耶を揶揄い意地悪することを何より楽しみにしているような子どもたちであった。
…けれど、それを両親に訴えることはできなかった。
口下手なせいもあるが、大人の前では評判の良い子の彼女たちに意地悪をされると言っても誰も信じないだろうと思ったのだ。
…それに…。
華子や麗香は本家筋に近い家柄の娘たちだ。
分家の…かなり末流の自分がそのようなことを言いだしてはならないような微妙な空気を、紗耶は六歳にして感じ取っていたのだ。