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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
…藤木はカシミヤの白いタートルネックのセーターにキャメル色のジャケット、ダークブラウンのパンツというシンプルな服装だが、貌立ちとスタイルの良さが際立ち、とても良く似合っている。

紫織は藤木の横貌が大好きだ。
すっきりと高い鼻梁、形の良い唇、頰の線はシャープで顎は鋭角で男らしい。
…そして、陽の光に透ける榛色の瞳…。
目尻がすっと切れ長で、見れば見るほど、凛として美しい…。

「…何見てるの?」
笑いながら尋ねられ
「先生の貌。
綺麗だなあ…て見てた」
「…やめてよ。
君みたいに綺麗な女の子に褒められるような貌じゃないよ」
長い手を伸ばされ、頰を軽く抓られる。
「ううん。本当に綺麗。
榛色の瞳が光に当たって琥珀色に輝いてる。
…大好き…」
助手席から伸び上がり、藤木の頰に軽くキスをした。

…ここは伊豆だ。
二人を見知る人もいない。
その開放感から、大胆なことができた。

「…こら。
前方不注意になる」
照れたようにわざと厳しく注意され、紫織はくすくす笑いながら藤木の肩にそっともたれかかる。
「…幸せ…」
…深い深い森に咲く百合の薫りと、ひんやりとした仄暗いモッシーの薫り…。

藤木は片手ハンドルで優しく手を握り締めてくれた。
そして、そっと告げられた。

「…僕もだよ…」


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